学会前泊の夜行バスで計算が全部狂った
大学院でTAをしている。昨年、地方の学会に自費参加した際、節約のため夜行バスを選んだ。これが失敗だった。事実関係を整理する。
(1)出発前、駅の立ち食いそばと緑茶500ml。(2)バスは4列シート、トイレなし、休憩は3時間ごと。(3)乗車1時間で尿意を自覚。この時点で次の休憩まで残り2時間。窓側の席で、隣は寝ている年配の男性。カーテンの隙間から漏れる高速道路の灯りが、やけに規則的に流れていくのを覚えている。
起こして通路に出る選択肢はあったが、休憩まで耐える方が合理的と判断した。この判断が甘かった。1時間半経過時点で、貧乏ゆすりが止まらなくなる。座席のリクライニングを少し倒しては戻し、姿勢で誤魔化そうとしたが効果はなかった。これが第一波だとすれば、まもなく第二波が来た。
車内は消灯され、隣近所の乗客はほぼ全員眠っている。この静寂と密室性が、逆に自分の下腹の感覚を過剰に意識させた。座席の間隔は狭く、足を組み替える余地もほとんどない。バスのタイヤが路面の継ぎ目を拾うたびに、下腹に軽い衝撃が響き、その都度小さく息を止めた。運転手にトイレ休憩を申し出るという選択肢も頭をよぎったが、乗客全員の予定を乱すことへの抵抗感が勝った。この社会的な檻の感覚こそが、あの夜を長く感じさせた最大の要因だったと思う。
2時間経過、下腹に鈍い痛み。周期的に強い波が来て、波の間隔が短くなっていくのが自分でも分かった。実検データを取るような気持ちで波の間隔を数えて気を紛らわせたが、限界だった。冷や汗が背中を伝う感覚まで、妙にはっきり記憶している。膝を強く合わせ、座席の肘掛けを握る手にも力が入った。
休憩のSAに着いた瞬間、隣の人をまたいで転がるように降車。トイレまで小走りで向かったが、個室に入って下ろす直前に少し出た。下着の被害は軽微だが、ゼロではなかった。個室の壁にもたれて呼吸を整えた数十秒は、今も鮮明に思い出せる。手足の先まで血の気が引いていくような感覚と、ようやく終わったという安堵が同時に押し寄せてきたのを覚えている。
結論:夜行バス乗車前の水分は300ml以下に制限すべき。今も学会は夜行バスだが、この運用にしてから事故はない。学会発表の緊張よりも、あの2時間の方が今でも記憶に鮮明に残っているのは、研究者としてはやや情けない話だと思う。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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