測定装置から離れられない4時間、院生の膀胱の限界値
自分の失敗の記録。分野は伏せるが、私の実検は一度走らせると4時間、途中で装置から離れられない類のものだ。正確には離れられるが、30分ごとに手動操作が必要で、トイレは実質10分以内の離席しか許されない。トイレは同じ階にあるので通常は問題ない。問題だったのは、その日の昼に飲んだスープとお茶の総量、約900ml。
開始2時間で尿意。この時点で行けばよかった。だが操作のタイミングが微妙に噛み合わず、「次の操作の後で」を3回繰り返した。深夜の実験室に響くのは装置のファン音だけで、その音に紛れて自分の下腹の鈍痛だけがどんどん存在感を増していった。これが第一波、続いて訪れたのがより強い第二波だった。
2時間半経過時点、椅子に座ったまま太ももを強く合わせる姿勢が定着した。装置の操作パネルを見つめながら、頭の中では常に膀胱の状態を計算していた。あと何分、あと何回の操作。計算が合っている間はまだ耐えられたが、途中で予定より操作が長引いた瞬間、全身から血の気が引くような感覚に襲われた。深夜の静けさの中、自分の呼吸音だけがやけに大きく聞こえたのを覚えている。
3時間経過、椅子に座っているのが困難になり、立って足踏みしながらモニタを見る。膝を合わせ、太ももに力を入れて堪えるのが精一杯だった。3時間40分、下腹部が痛い。残り20分が永遠に感じられた。時計の分針が全く動かないように見えた。呼吸すら浅くなり、画面の数値を追う目もどこか虚ろになっていたと思う。
終了ボタンを押した瞬間に走った。廊下で少し漏れた。トイレの個室に入る直前にもう一段階漏れた。便座に座れた時には下着はほぼ手遅れだった。安堵と情けなさが同時に押し寄せてきて、しばらく個室から出られなかった。幸い深夜で誰もおらず、研究室に置いてある予備の服で復旧できた。
対策として、実験日は開始3時間前から水分摂取を止める運用に変更した。QOLは下がったが事故率は0になった。あの夜、便座に座った瞬間に感じた脱力感と情けなさの混合物は、研究データには残らないが自分の記憶には確実に刻まれている。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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