測定インターバル15分と同期の腸の戦い
卒論の追い込みで、15分間隔でサンプルを測定し続ける実験を隣のベンチの同期(女子)がやってた時の話な訳で。1回の測定に12分、残り3分で次の準備。この3分でトイレに行けるかというと、装置の部屋から一番近い生きてるトイレまで片道2分な訳。理論上は可能、実際は無理。その理論と現実のギャップが、この話を生み出した。
12月のある日、昼過ぎから彼女の様子が明らかにおかしくなった。朝に食った賞味期限切れっぽいサンドイッチが原因らしい。測定は全12サイクル、途中で止めるとその日のデータが全部パーになる訳で、彼女は止めない選択をした。その選択は、勇気というより、研究者の執念に近かった。
残り4サイクル、約1時間。椅子の上で膝を抱えたり、腹を押さえて前傾姿勢になったり、額に汗を浮かべながらラボノートに「限界 あと3」とか書いてるのが横から見えた。彼女の指先が震えて、ペン先が紙を強く押しすぎていたのも覚えてる。その文字の力の入り方が、彼女の状態を物語ってた。
俺にできるのは「代わりに数値読むから個室行ってこい」って言うことだけだったが、「戻る時間入れたら間に合わん、計算した」と真顔で断られた訳で。その真顔が、俺の心臓を打った。彼女の必死さが、ひしひしと伝わってきた。
残り2サイクルあたりからは口数がゼロになって、装置の駆動音だけが部屋に響いてた。時々小さく息を吐く音が聞こえて、こっちまで手汗をかいた。その息づかいは、瞑想のそれに似ていて、彼女が精神と肉体の限界と対峙してるのが、その音から伝わってきた。
終了のビープと同時に彼女はダッシュして、廊下の角を曲がる音まで聞こえた。10分後、戻ってきた顔は完全に賢者だった。データは無事、本人も無事だったらしい。教授には「よく粘ったな」と言われてたが、何を粘ったかは俺も言ってない訳で。その沈黙の中に、俺たちの青春の一部が詰まってると思う。
― この話は、これにて ―
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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