深夜2時の理系棟、非常階段で同期が放水してた件
うちの研究室は年度末になると泊まり混みが常態化する訳で、俺も3月は週の半分をソファで寝てた。で、これは2月末の深夜2時ごろの話。理系棟のB棟は今、配管更新工事で3階のトイレが使用禁止な訳。生きてるのは1階だけで、深夜はそこも清掃機材で半分塞がってる。その糞みたいな状況が、この話を生み出した。
俺が実験の待ち時間に自販機へ降りたら、非常階段の踊り場のドアが半開きでさ。風でバタバタいうから閉めようと近づいたら、外の踊り場で同期(M1の女子)が手すりの内側でしゃがんでた。長い前髪を耳にかけて、いつもの実験着のまま、下だけ器用にずらしてる格好だった。その光景は、実験室の日常とは全く別世界のものでした。
最初マジで具合悪いのかと血の気が引いたんだが、よく見たら普通に用を足してるだけだった訳で。安心と気まずさが同時に来た。心臓が変な速さで打ってて、声をかけるタイミングを完全に見失った。その見失った時間が、長く感じられた。
声かけたら「1階まで我慢できんかった、すまん」と、顔を赤くしながら言われた。気持ちは分かる。培養の観察って15分間隔とかで、トイレ往復の時間すら惜しい時がある訳で。その緊急性が、彼女を踊り場へ追いやった。彼女の息が白く、震えているのがわかった。その震えは、寒さだけではなく、緊張と安堵の混在を表現していた。
俺は黙ってドアを押さえといてやった。共犯っぽくて嫌だったけど、見なかったふりをするより誠実な気がした。その判断が、彼女にとって、そして俺にとって、何を意味するのかは、その時は分からなかった。工事は4月までらしい。長い。あの踊り場を通るたび、今でも変な緊張感が蘇る訳で。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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