夏の開催花火大会と河川敷の長蛇の列
とても蒸し暑い7月の夜8時半頃、地元の川沿いで開催されていた花火大会でのことだ。気温は29度近くあり、川面からの湿気と人波の熱気で立っているだけで汗が噴き出してきた。私は土手の斜面に敷いたシートの上に座り、夜空に咲く大輪の花火を見上げていた。……その時、近くの立ち入り禁止ロープの横で立ち尽くしていた女性が目に入った。
年齢は20代半ばの女子大生風。薄いピンクの可愛らしい浴衣を着こなしていた。足元は鼻緒が少し痛そうな下駄を履き、手には浴衣とお揃いの巾着バッグを持っていた。最初は笑顔で自撮りをしていたが、突然お腹を抱え込むようにして前屈みになり、その場から一歩も動かなくなった。
彼女の様子がおかしいのはすぐに分かった。 両足をぴったりと揃え、下駄のつま先に体重をかけながら、内ももを激しく擦り合わせるようにしてもじもじと身を捩っているのだ。 熱気の中で喉を潤そうと冷たいラムネやビールを何杯も飲み、冷たい川風にさらされたことで、急激な尿意に襲われたようだった。 顔からは完全に血の気が引き、額には冷や汗の粒が光り、唇を強く噛みしめている。
河川敷の公衆トイレは200メートル以上も離れた場所にしかなく、そこにはすでに50人以上の長い行列ができていた。その逃げ場のない大混雑という物理的な檻が、彼女を精神的にも肉体的にも追い詰めていた。 見てはいけないと思いつつも、彼女の浴衣の裾の上から股間を必死に圧迫する仕草から目が離せなくなり、私の心臓はドクンと跳ね上がった。
尿意の第ニ波が彼女を直撃した。 「んん……」と喉の奥で息を漏らし、彼女は下駄を履いた両足を交差さえる(させる)ようにして、括約筋を極限まで引き締めている。 友達が心配して声をかけるが、彼女は涙目のまま首を激しく横に振るだけで、言葉を返す余裕すら失っているようだった。
ついに限界に達したのか、彼女は友達の制思(制止)を振り切るようにして歩き出したが、歩くたびに腰が引けている。お尻をかばうように極端な内股のまま、土手の奥にある暗い草むらの影へと長る(這う)ようにして消えていった。 今でも花火の爆音を聞くたび、あの時の彼女の限界の表情と、暗闇の中に消えていった切迫した後ろ姿を思い出して胸が苦しくなる。
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