金曜夜のタクシー、首都高渋滞40分。29歳銀行員、人生最大の危機でした
銀行勤めの29歳です。先々月の金曜びの話を、恥を忍んで書かせてください。
支店の飲み会で、ビールを3杯、ハイボールを2杯。一次会でおとなしく帰るつもりが、送別の挨拶やらで店を出たのは23時前でした。トイレ?もちろん店で済ませました。済ませたはずでした。
同じ方面に住む先輩(30代前半の女性です)とタクシーに相乗りして、乗った直後は本当に平気だったんです。ですが首都高に乗った瞬間、電光掲示板に「事故渋滞 3km 40分」の文字。あの赤い文字を見た瞬間、膀胱が「聞いてないよ」と言い出したのが分かりました。人間の体って本当に現金です。
最初の波は小さいものでした。座り直せばやり過ごせる程度。ですが渋滞の中、車が一台分進んでは止まるたびに、波の間隔が縮んでいくんです。10分後には脚をぎゅうっと組んで、コートを膝の上に重ねて、窓の外のテールランプの列を数えるふりをしていました。
先輩との会話?ええ、してましたよ、たぶん。何を話したかは全然覚えてません。頭の中はずっと計算です。次の出口まで2キロ、降りてからコンビニまで……いや降りられない、ここ首都高だ、という絶望の計算。
いちばん怖かったのは、段差でした。車がわずかに揺れるたび、決壊寸前のダムに小石を投げ込まれるような感覚がして、私は無言で天井の手すりを握りしめていました。手のひらにじっとり汗をかいて、喉はカラカラなのに。体の水分どこ行った。
運転手さんが「次の出口で降りて下道行きましょうか」と言ってくれた時、後光が見えました。降りてすぐのコンビニに文字どおり転がり込んで、事なきを得ました。個室で座った瞬間、変な声が出たのはここだけの話です。
お会計のとき、先輩が「実は私も限界だった」と白状して、二人でコンビニのトイレに並んだのが、今となってはいい思い出です。よくないですけど。以来、金曜びの帰りは、乗車前にトイレ2回が私のルールです。
― この話は、これにて ―
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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