排泄物語

添乗員はトイレに行けない。成田第2ターミナルでの私の限界記録

投稿者: 換算レート脳内固定2分で読めます閲覧 1,5563.7(14件)

本日はお客様ではなく、私自身の恥ずかしい記録を書かせていただきます。海外ツアーの添乗で、成田空港第2ターミナルから30名様のグループをお送り出しする日のことでございました。添乗員の朝は戦場でございます。

集合カウンターの設営、名簿確認、パスポート点検、超過手荷物の交渉。7時に空港入りしてから気づけば11時。その間、私は一度もお手洗いに行っておりませんでした。行けなかったのでございます。カウンターを離れた3分の間にお客様が迷子になるのが、この仕事でございますから。喉の渇きすら感じる余裕がないほどでございました。

全員の出国手続きが済み、制限エリアへお見送りした時点で、私の膀胱は完全に限界を越えておりました。ここからでございます。最寄りのお手洗いまで通常なら徒歩1分。しかしその日は連休初日、女性用は7名待ちの列。膝の裏がじんわりと汗ばみ、下腹に鈍い痛みが第一波としてやってまいりました。少し引いたと思った矢先、より強い第二波が襲ってまいりました。

元CAとして申し上げますが、あの時ほど機内の「クルー専用」の環境が恋しかったことはございません。列に並んだ7分間、私は営業スマイルの裏で、重心を15秒ごとに左右へ移し替える「添乗員ステップ」を踏み続けました。前の方が個室から出てくるたび、心の中で「お願い、次こそ」と祈っておりました。三人目が入った時には、もう膝が笑うような感覚すらございました。

最初は下腹部の鈍い違和感程度でございましたが、これが第一波。5分もしないうちに、より強い第二波が参りました。冷や汗が背中を伝い、額にも玉の汗が浮いていたと思います。四人目、五人目と列が進むにつれ、私は「あと二人、あと二人」と自分に言い聞かせておりました。周りのお客様に「添乗員さん、大丈夫ですか」とお声がけいただいたことも、正直なところあまり記憶にございません。それほどまでに、目の前の個室のドアだけを見つめておりました。

個室に入れた瞬間、思わず声が漏れたことを白状いたします。全身から力が抜けていくあの感覚は、何年経っても忘れられません。手洗いを済ませて鏡を見た自分の顔が、まるで別人のように青白かったことも覚えております。あの日以来、私の添乗バッグには「空港各ターミナルのお手洗い混雑マップ(自作)」が入っております。同僚にはよく笑われますが、あの30分間の恐怖を知っている者としては、笑って済ませられない備えでございます。ご登場…いえ、ご搭乗のお客様より先に、まず自分のお手洗いを制する。これがプロの行程管理でございます。

― この話は、これにて ―

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掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。

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