終電間際の駅のホーム
初夏の夜11時半、蒸し暑い駅のホームでのことだ。私は飲み会帰りのサラリーマンたちに混ざって、終電近くの電車を待っていた。昼間の熱気がまだ残るホームは不快な空気で満ちていた。
……その時、少し離れたベンチの横に立つ女性が目に入った。
年齢は30代前半くらいだろうか。仕事帰りらしいきっちりとしたグレーのビジネススーツを着て、肩から大きなトートバッグを提げていた。髪は後ろで一本に結んでおり、足元は黒いパンプスだ。
最初は何気なくスマホを見ているのかと思ったが、彼女の体が不自然に揺れていることに気づいた。
パンプスのカカトを交互に上げ下げし、内股をこれでもかと擦り合わせている。時折、持っているバッグを下腹部に強く押し当てるようにし、顔を俯かせてきつく目を閉じていた。彼女の整った顔は苦悶で歪み、額には冷や汗がにじんでいる。
その様子を見た瞬間、私の喉がカラカラに渇き、彼女のスーツの腰回りに視線が釘付けになった。
彼女は終電間際のホームという、逃げ場のない状況で激しい尿意と戦っている。電車の到着を知らせるアナウンスが流れたが、遅延しているらしく、到着まであと5分かかるという。彼女はビクッと全身を震わせ、さらに内股の力を強めた。
見てはいけないと思うのに、彼女のパンプスのつま先が激しく震える様子から目を離せなかった。
ようやく電車が滑り込んできた時、彼女は乗車するのを諦めたように、引きずるような足取りで改札階のトイレへと小走りで向かっていった。
今でも夏の夜の遅延アナウスを聞くたび、あのホームで必死に耐えていた彼女の張り詰めた姿を思い出して胸が熱くなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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