登山道から外れた茂みで、人妻ハイカーの野糞を目撃してしまった
昨年の秋、単独で低山を縦走していた時のこと。標高900メートルほどの稜線を過ぎ、昼過ぎに水場を探して登山道を少し外れたのがそもそもの間違いだった。落ち葉を踏む音以外は何も聞こえない静かな斜面で、茂みの向こうに見覚えのないザックが置いてあるのが目に入った。赤いカバーをかけた50リットルほどの大きめのザックで、単独行の女性のものにしては荷が多いなと思ったのを覚えている。
嫌な予感がして足を止めたが、遅かった。木々の隙間、5メートルほど先に、登山ウェア姿の女性がしゃがみ込んでいた。年の頃は40前後、薬指に指輪が光っていたから人妻だろう。落ち着いた紺のジャケットに、まとめ髪から後れ毛が数本垂れている。細身だが引き締まった体つきで、山慣れした人特有の落ち着きがあった。タイツとパンツを膝まで下ろし、白い尻を突き出すような姿勢で、明らかに「大」の最中だった。
風向きのせいか、彼女はこちらに全く気づいていない。苦しそうな、それでいてどこか安堵したような横顔。眉根を寄せ、唇を軽く噛み、時折「ん、く……」と押し殺した声が漏れる。静かな山の中に、その息遣いと微かな音だけが響いていた。太ももが小刻みに震えているのが、遠目にもわかった。両手を膝についてバランスを取りながら、時折体を小さく揺らす様子は、里では絶対に見られない姿だった。
見てはいけないと分かっていながら、体が固まって動けなかった。心臓が耳の奥で鳴っているのが分かるくらい、鼓動が速くなっていた。数十秒が数分にも感じられた。彼女がふう、と長い息を吐いたところで我に返り、私はザックの熊鈴を手で押さえ、来た道をそろそろと引き返した。木の根に足を取られそうになりながら、後ろを一度も振り返らなかった。
10分後、登山道で彼女とすれ違った。何食わぬ顔で「こんにちは」と爽やかに挨拶された時の、あの何とも言えない気まずさは今でも忘れられない。向こうは本当に気づいていなかったのか、それとも大人の余裕でやり過ごしただけなのか、今もって分からない。あの横顔と、山の匂いに混じったあの一瞬の気配だけは、何年経っても頭の隅から離れない。見てはいけないものを見たという罪悪感と、なぜか焼き付いて離れない記憶が同居している。山では誰もが動物に還るのだと知った日だった。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
この話は掲示板より発掘・再構成したものです。出典: 登山板・山で見た衝撃の光景スレ
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