大ヒット映画の上映中と逃げられない客席
肌寒い十一月の土曜日、午後三時すぎの都心の映画館でのことだ。公開されたばかりの大ヒット映画を鑑賞するため、シアター内は満席で、立ち見が出るほどの熱気に包まれていた。私は中央列のど真ん中の席に座っていたが、本編の中盤に差し掛かった頃、下腹部の奥深くでズシンと重い地鳴りのような便意の第一波が静かに鳴り響いた。映画館に入る前に、ロビーで購入した冷たいコーラとポップコーンを一気に胃に流し込んだのが完全に裏目に出てしまったのだ。
私はその日、上品な薄手のグレーのニットワンピースに、黒のストッキング、そしてヒールのあるショートブーツを履いていた。髪は後ろでゆるくまとめていたが、腹痛の焦燥感から全身に噴き出した冷や汗で首元がじっとりと濡れ、ワンピースの襟元が皮膚に張り付いた。綺麗に整えていたはずのファンデーションが脂汗でじわじわと浮き上がり、マスカラが滲んで鏡を見ずとも顔面蒼白になっているのが自覚できた。
シアター内は真っ暗で静まり返っており、座席の両隣には他のお客さんがぎっしりと座っているため、今ここで席を立って「すみません」と謝りながら通り抜けることは、強烈な社会的羞恥心を伴う。この脱出不可能な檻が、私を座席に縛り付けていた。
便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、括約筋はすでに限界値に達していた。ワンピースの中で両腿をぎゅっと交差させ、内もも同士を強く押し付け合って耐えた。ブーツのつま先に全体重をかけ、カカトを交互にせわしなく上下させながら、お尻の括約筋を極限まで締め付けた。お腹の中で泥水が渦巻くような蠕動運動が起こるたび、私は思わず「くっ……」と声を漏らしそうになり、上体を深く折り曲げて膝を握りしめ、指先が白くなるほど強く爪を立てた。
「あと十分、このクライマックスシーンが終わるまで……」と、頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返し、祈り続けた。恥ずかしさと、この静かな空間で漏らしてしまうのではないかという恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。見てはいけないと思つつも、自分の限界の太も目の震えと、ワンピースの生地が不自然に揺れ動くスリルの中で、心臓は早鐘のように脈打っていた。
ようやくエンドロールが始まった瞬間、私は立ち上がったが、一歩歩くごとに、お腹の奥の熱い塊出口を求めて激しく暴れ、涙目で顔を歪めながら個室へ滑り込んだ。便座に腰を下ろし、すべてが一気に放出された瞬間の凄まじい解放感は、今でも映画館に行くたびにあの日た冷や汗と股の奥が疼く恐怖を思い出させる。
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