大学入試の静まり返った試験教室
木枯らしの吹き付ける二月の第一月曜日、午前十時すぎの難関大学の入試会場でのことだ。英語の試験が開始されてから三十分が経過し、教室内には受験生たちのペン先が紙を削る規則的な音と、時折響く暖房の作動音だけが流れていた。私は試験監督として教壇の上に立っていたが、前から二列目の席に座っていた女子受験生の様子に微かな異変が生じたことに気がついた。……その時、彼女の不自然な仕草が目に入った。
彼女は上品な白いダッフルコートを椅子の背もたれに掛け、グレーのウールセーターに、タイトな黒のチェックスカート、そして黒のタイツと茶色のハーフサドルローファーを穿いていた。髪は後ろでハーフアップに整えられていたが、その首筋にはだらだらと冷や汗が流れ落ち、セーターの襟元を濡らしていた。
彼女は突然、抱えていた問題冊子を両手で強く抱え込み、それを下腹部を押し潰すように強く押し当てした。スカートの中で、タイツを穿いた内ももをこれでもかと密着させ、両膝を左右に激しくもじもじと擦り合わせいる。試験前の緊張をほぐすために飲んだ温かいココアが完全に裏目に出たのだろう。顔面は完全に血の気が引いて白くなり、綺麗に施されたメイクは冷や汗で崩れ、マスカラが滲んで目の周りが黒くなっているのが見えた。
試験中であり、途中で退席すれば残り時間を失うだけでなく、何より人生をかけた大一番を台無しにしてしまうという極限の社会的状況が、彼女を座席という檻に縛り付けていた。彼女は奥歯を噛み締め、時折「はぅ……っ」と熱く荒い吐息を漏らし、腰を低く落としてお腹を抱え込むようにして必死に耐えていた。
見てはいけないと思つつも、彼女のチェックスカートの裾から伸びる、がくがくと震える太も目の動きと、限界の仕草から目が離せなかった。私の心臓はうるさく鼓動を刻み、喉の渇きを覚えるほどだた。彼女はローファーのつま先を床に強く押し付け、お尻の筋肉を極限まで締め付けていた。
試験終了のチャイムが鳴った瞬間、彼女はお尻をかばう極端な内股のまま、這うようにして教室を飛び出してトイレへと駆け込んでいった。今でも受験会場の独特な静寂を思い出すたび、あの時の彼女の限界の震えと、室内に漂っていた焦燥の気配を思い出して胸がゾクゾクと熱くなる。
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