創立記念レセプションと華やかなドレスの檻
肌寒い十一月の金曜日、午後七時すぎの一流ホテルの大宴会場でのことだ。会社の創立五十周年記念レセプションが行われており、会場内は取引先の要人や役員、そして華やかなドレスを着た出席者たちで異様な熱気に包まれていた。私は受付スタッフとして入り口に立っていたが、壇上で司会進行を行っていた総務部の先輩である麻里さんの様子に微かな異変が生じたことに気がついた。……その時、彼女の不自然な動きが目に入った。
彼女は二十代後半の非常にスマートなOLで、上質なネイビーのタイトドレスに、薄手のストッキングと七センチの黒ヒールパンプスを履いていた。髪は後ろで上品なハーフアップにまとめていたが、その首筋にはだらだらと冷や汗が流れ落ち、ドレスの胸元を濡らしていた。
彼女は突然、マイクを持つ手を演台に強く押し当て、もう片方の手でドレスの上から下腹部を強く押し当てるようにし始めた。タイトドレスの中で、ストッキングを履いた内ももをこれでもかと密着させ、両膝を交互にもじもじと擦り合わせいる。レセプション開始前に緊張をほぐすために冷たいシャンパンを何杯も飲み干したのが完全に裏目に出たのだろう。顔面は完全に血の気が引いて白くなり、綺麗に施されたメイクは冷や汗で崩れ、涙目のようになっているのが見えた。
レセプションは社長の祝辞が続く真っ最中であり、司会者が持ち場を離れることは進行上絶対に許されないという極限の社会的責任が、彼女を演台という檻に縛り付けていた。彼女は奥歯を噛み締め、時折「はぅ……ん……」と熱く荒い吐息を漏らし、腰を低く落としてお腹を抱え込むようにして必死に耐えていた。
見てはいけないと思つつも、彼女のタイトドレスの生地越しに伝わる、がくがくと震える太も目の動きと、限界の仕草から目が離せなかった。私の心臓はうるさく鼓動を刻み、喉の渇きを覚えるほどだた。彼女はパンプスのヒールを床にカツカツと不自然に響かせ、お尻の筋肉を極限まで締め付けていた。
レセプションが一時中断し、歓談の時間に移った瞬間、彼女はお尻をかばう極端な内股のまま、這うようにしてステージ裏の化粧室へと駆け込んでいった。今でもホテルのパーティー会場のシャンデリアを見るたび、あの時の彼女の限界の震えと、密室に漂っていた焦燥の気配を思い出して胸がゾクゾクと熱くなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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