真夏の野外フェスと遠い仮設トイレ
照りつけるような八月の土曜日、午後一時すぎの広大な野外音楽フェスの会場でのことだ。気温は三十五度を超え、アスファルトからは陽炎が立ち上る中、会場内は数万人の熱気と大音量の音楽に包まれていた。私は友人とステージの最前列付近にいたが、冷たいビールや炭酸飲料を立て続けに飲み干したことが、この最悪のタイミングでお腹の奥を直撃した。最初の異変は、突然訪れた。下腹部の奥深くでゴロゴロと重い地鳴りのような便意の第一波が走り抜けたのだ。
私はその日、動きやすいブランドもののタイトなショートパンツに、薄手のレギンス、そしてスニーカーを合わせていた。髪はポニーテールに結んでいたが、便意の焦燥感から全身に噴き出した冷や汗で額の生え際が濡れ、前髪が張り付いた。綺麗に施したはずのファンデーションが脂汗で浮き上がり、マスカラが滲んで涙目のようになっているのが自覚できた。
周囲は満員電車のように人が密集しており、ここから離脱するだけでも十五分以上かかる。さらに、最も近い仮設トイレまでは数百メートル離れており、大行列ができていることは確実だった。この絶対に逃げ出せない社会的状況が、私を観客の渦という檻に縛り付けていた。
便意は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、下腹部がギシギシと激しく痛む。私はショートパンツの下で、レギンスを履いた内ももをこれでもかと密着させ、両膝を交互にすり合わせるようにして激しく震えさせた。スニーカーのつま先に全体重をかけ、お尻の筋肉を極限まで締め付けて括約筋の決壊を防いだ。
「あと十分、この曲が終わるまで……」と、頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返すが、焦りで頭が真っ白になった。恥ずかしさと、この大衆の前で今にも漏らしてしまいそうだという恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。自分の限界の太も目の震えと、ショートパンツの生地が不自然に揺れるスリルの中で、心臓は早鐘のように脈打っていた。
ついに限界に達し、私は友人に「ごめん、トイレ……」と涙目で告げて人混みを押し分けた。お尻をかばう極端な内股の姿勢ですり足で走り、仮設トイレへと滑り込んだ。便座に腰を下ろし、熱い液体が一気に放出された瞬間の、頭の芯がとろけるような凄まじい解放感は、今でもフェスの音楽を聞くたびに下腹部の奥をキュンと熱くさせるほどだた。
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