深夜の終電遅延と限界の帰路
肌寒い十一月の水曜日、午前零時半すぎの郊外を走る各駅停車電車の車内でのことだ。踏切内の安全確認の影響で、電車は最寄り駅の一駅手前で急停車し、そのまま運転を見合わせてしまった。車内は暖房が効きすぎて蒸し暑く、疲れ切った乗客が押し黙る中、私の下腹部にズシンと重い便意の第一波が襲いかかった。深夜の冷え込みに備えて、駅のホームの自動販売機で温かい缶コーヒーを一気に飲み干したことが、完全に裏目に出てしまったのだ。
私はその日、上質なベージュのウールコートに、タイトな黒の膝丈フレアスカート、そして薄手のストッキングと五センチの黒パンプスを履いていた。髪はハーフアップに整えていたが、腹痛の焦燥感から全身に噴き出した冷や汗で額の生え際が濡れ、前髪が額にじっとりと張り付いて不快だった。顔からは完全に血の気が引き、鏡を見ずとも土気色になっているのが自覚できた。
ドアが開かない密室が私を肉体的にも精神的にも限界へと追い詰めていく。お腹の中で冷たい泥水が渦巻くような激しい蠕動運動が起こるたび、私は思わず「くぅ……っ」と声を漏らしそうになり、吊り革を掴む指先が白くなるほど強く握りしめた。
スカートの中で両腿をぎゅっと交差させ、内もも同士を強く押し付け合って耐えた。パンプスのつま先に全体重をかけ、カカトを交互にせわしなく上下させながら、お尻の括約筋を極限まで締め付けた。お腹の奥が痛むたびに「あと五分、電車さえ動けば……」と頭の中で必死に計算を繰り返すが、焦りで頭が真っ白になった。
恥ずかしさと、この車内で今にも漏らしてしまいそうだという恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。自分の限界の太も目の震えと、スカートの裾が不自然に揺れるスリルの中で、心臓は早鐘のように脈打っていた。
停車から二十分後、ようやく電車が動き出し、最寄り駅に滑り込んだ。ドアが開いた瞬間、私は通路を這うようにしてホームへ出たが、一歩を踏み出す衝撃でお尻の奥が限界を迎えそうになり、その場で動けなくなった。涙目でカバンをお腹に強く押し当て、がくがくと震える膝を内側に折り曲げ、すり足のような奇妙な歩幅でトイレへと急いだ。個室の便座に滑り込み、熱いものが一気に放出された瞬間の、頭の芯がとろけるような凄まじい解放感は、今でも深夜の電車の踏切音を聞くたびに下腹部の奥をキュンと疼かせるほどだた。
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