月末の銀行ロビーの混雑
肌寒い十月の金曜日、午後二時半すぎの都心の地方銀行の支店ロビーでのことだ。月末の五十日ということもあり、ロビーは手続きを待つサラリーマンや主婦で溢れ返り、待合のソファーはすべて埋まっていた。私は会社の経理の用事で訪れていたが、ロビーで番号札を持って立っている最中、下腹部にズシンと重い便意の第一波が襲いかかった。来店前に冷え込み対策にと自動販売機で購入した温かい缶コーヒーを一気に飲み干したことが、完全に裏目に出てしまったのだ。
私はその日、上品な薄手のネイビーのアンサンブルニットに、白いロングプリーツスカート、そして薄手のストッキングと黒のフラットパンプスを履いていた。髪はハーフアップに整えていたが、腹痛の焦燥感から全身に噴き出した冷や汗で額の生え際が濡れ、前髪が額にじっとりと張り付いて不快だった。顔からは完全に血の気が引き、鏡を見ずとも土気色になっているのが自覚できた。
いつ自分の番号が呼ばれるか分からない状況であり、今ここでロビーを離れてトイレに向かえば、手続きが大幅に遅れてしまうという社会的圧力が、私を混雑するロビーという檻に縛り付けていた。
便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、括約筋はすでに限界値に達していた。プリーツスカートの中で両腿をぎゅっと交差させ、内もも同士を強く押し付け合って耐えた。パンプスのつま先に全体重をかけ、カカトを交互にせわしなく上下させながら、お尻の括約筋を極限まで締め付けて括約筋の決壊を防いだ。お腹の中で泥水が渦巻くような激しい蠕動運動が起こるたび、私は思わず「くっ……」と声を漏らしそうになり、手にした番号札を握る指先が白くなるほど強く握りしめた。
「あと五分、この窓口の処理が終わるまで……」と、頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返し、祈り続けた。恥ずかしさと、この静かな銀行のロビーで今にも漏らしてしまいそうだという恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。自分の限界の太も目の震えと、プリーツスカートが小刻みに揺れるスリルの中で、心臓は早鐘のように脈打っていた。
窓口での手続きが終了した瞬間、私はお尻をかばう極端な内股の姿勢でロビーを飛び出し、店舗の奥にある多目的トイレへ駆け込んだ。個室の便座に滑り込み、熱いものが一気に放出された瞬間の、頭の芯がとろけるような凄まじい解放感は、今でも銀行の呼び出しチャイムを聞くたびに下腹部の奥をキュンと疼かせるほどだた。
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