金曜夜の満員居酒屋での孤立
凍てつくような二月の金曜日、午後九時すぎのにぎやかな居酒屋でのことだ。職場の同僚たちとの一次会が盛り上がっている中、店内はサラリーマンや学生のグループで満席となっており、居酒屋独特の騒音と焼き鳥の煙が立ち込めていた。私は個室風の座敷席に座っていたが、会が中盤に差し掛かった頃、私の下腹部にズシンと重い地鳴りのような便意の第一波が襲いかかった。乾杯の後に冷たいジョッキビールを立て続けに三杯も一気に流し込み、冷えた胃腸を直撃したのが完全に裏目に出てしまったのだ。
私はその日、上品な薄ピンクのタートルネックニットに、タイトな黒の膝丈スカート、そして八十デニールの黒タイツに五センチのヒールパンプスを履いていた。髪はハーフアップに整えていたが、腹痛の焦燥感から全身に噴き出した冷や汗で額の生え際がじっとりと濡れ、前髪が額にはりついて不快だった。顔からは完全に血の気が引き、鏡を見ずとも土気色になっているのが自覚できた。
同僚たちが仕事の話や雑談で盛り上がる中、主賓である私の立場から途中で何度も席を立つことは極めて気まずく、周囲の目を気にする社会的重圧が私を座敷に縛り付けていた。
便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、括約筋はすでに限界値に達していた。タイトスカートの中で両腿をぎゅっと交差させ、内もも同士を強く押し付け合って耐えた。パンプスのつま先に全体重をかけ、カカトを交互にせわしなく上下させながら、お尻の括約筋を極限まで締め付けた。お腹の中で泥水が渦巻くような蠕動運動が起こるたび、私は思わず「くっ……」と声を漏らしそうになり、上体を深く折り曲げて膝を握りしめ、指先が白くなるほど強く爪を立てた。
「あと十分、この乾杯の音頭が終わるまで……」と、頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返し、祈り続けた。恥づかしさと、この騒がしい空間で漏らしてしまうのではないかという恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。自分の限界の太も目の震えと、スカートの生地が不自然に揺れ動くスリルの中で、心臓は早鐘のように脈打っていた。
ようやく会がお開きになった瞬間、私は立ち上がったが、一歩歩くごとに、お腹の奥の熱い塊が出口を求めて激しく暴れ、涙目で顔を歪めながらトイレの個室へ滑り込んだ。便座に腰を下ろし、すべてが一気に放出された瞬間の凄まじい解放感は、今でも居酒屋のジョッキの音を聴くたびにあの日た冷や汗と股の奥が疼く恐怖を思い出させる。
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