初春の満開公園と消えた仮設トイレ
肌寒い三月の第二日曜日、午後二時すぎの満開の桜が咲き誇る都立公園でのことだ。お花見の観光客で園内はごった返しており、春の冷たい突風が吹き抜ける中、私は友人たちとお花見のシートに座っていた。最初の予兆は、周囲の寒さと、持参した水筒の冷たい緑茶を何杯も飲み干してしまったことが引き金となり、下腹部の奥深くでツンとした鋭い尿意の第一波が走り抜けた。
私はその日、可愛らしい白いコットンニットに、ベージュのコーデュロイミニスカート、薄手のストッキングと歩きやすいローヒールの茶色いサイドゴアブーツを履いていた。髪はサイドでツインテールに結んでいたが、尿意の焦燥感から全身に噴き出した冷や汗で額の生え際が濡れ、前髪が張り付いた。綺麗に施したはずのファンデーションが脂汗で浮き上がり、マスカラが滲んで涙目のようになっているのが自覚できた。
公園の周囲には何千人もの人がおり、最寄りの公衆トイレには「六十分待ち」の看板が掲げられ、長い蛇行する行列ができていた。列から離脱してトイレに並んでも、順番が来る前に膀胱が決壊することは火を見るより明らかだった。この逃げ場のない社会的状況が、私をシートの上という檻に縛り付けていた。
尿意は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、膀胱は決壊寸前の水風船のように膨らみ、下腹部がギシギシと痛む。私はミニスカートの下で、ストッキングを履いた内ももをこれでもかと密着させ、両膝を交互にすり合わせるようにして激しく震えさせた。ブーツのつま先に全体重をかけ、お尻の筋肉を極限まで締め付けて尿道の栓を守っていた。足の指先を限界まで丸め、全身の筋肉を硬直させて尿意を逃がそうとするが、お腹の奥の熱い圧力は高まる一方だった。
「あと十分、この桜の木の写真を撮り終わるまで……」と、頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返し、祈り続けた。恥づかしさと、この無防備な公園の中で今にも漏らしてしまいそうだという恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。自分の限界の太も目の震えと、コーデュロイスカートが小刻みに揺れるスリルの中で、心臓は早鐘のように脈打っていた。
ついに限界に達し、私は友人に「ちょっとトイレ……」と涙目で告げて列へ急いだ。お尻をかばう極端な内股の姿勢で走り、ようやく個室へと滑り込んだ。便座に腰を下ろし、温かい液体が一気に放出された瞬間の、頭の芯がとろけるような凄まじい解放感は、今でも春の桜を見るたびに下腹部の奥をキュンと熱くさせるほどだた。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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