無音のピラティス教室での試練
新緑の美しい五月の第二土曜日、午前十時半すぎの都心のピラティススタジオでのことだ。体験レッスンが行われており、室内にはアロマの香りとヒーリングミュージックが流れる静寂に包まれていた。私は前方のスタジオマットの上に座っていたが、レッスンの中盤に差し掛かった頃、私の下腹部に鋭い便意の第一波が襲いかかった。朝食に食べた冷たいヨーグルトと濃いめのブラックコーヒーを一気に流し込んでしまったのが完全に裏目に出てしまったのだ。
私はその日、ヨガ用の黒のピタッとしたストレッチパンツに、薄手のピンクの長袖スポーツTシャツを合わせていた。髪は後ろでポニーテールに結んでいたが、腹痛の焦燥感から全身に噴き出した冷や汗のせいで、うなじの後れ毛がじっとりと皮膚に張り付いて不快極まりない。眉尻のメイクは汗で完全に滲み、アイシャドウが目の下にヨレてパンダのようになり、自分の顔が青ざめていくのがはっきりと自覚できた。
静まり返ったスタジオ内で、インストクターの指示に従ってポーズを取る中、途中で席を外してトイレに行くことは極めて目立ち、生理現象を我慢できなかった恥ずかしい奴として笑いものにされる。この社会的檻と恐怖が、私をピラティスマットの上に縛り付けていた。
便意は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、腸は限界まで暴れて下腹部がギシギシと悲鳴を上げていた。私はマットの上で、ストレッチパンツの生地越しに内もも同士をこれでもかと密着させて擦り合わせた。つま先を床に強く押し付け、カカトをせわしなく上下させながら、お尻の括約筋を極限まで締め付けた。「あと十分、このレッスンが終わるまで……」と狂ったように秒刻みの計算を繰り返し、神に祈り続けた。
恥づかしさと、静まり返ったスタジオの中で今にも漏らしてしまうのではないかという絶望的な恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。自分の限界の太も目の震えと、ストレッチパンツ越しに伝わる脚の震えのスリルの中で、心臓は早鐘のように脈打っていた。
ようやくレッスンが終了した瞬間、私はお尻をかばう極端な内股の姿勢で立ち上がり、すり足で更衣室へ飛び出してトイレへと滑り込んだ。便座に腰を下ろし、温かい液体が一気に放出された瞬間の、頭の芯がとろけるような凄まじい解放感は、今でもピラティスの音楽を聴くたびに下腹部をキュンと疼かせるほどだた。
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