静まり返る図書室の死闘
凍てつくような一月の第二水曜日、午後四時すぎの高校の図書室でのことだ。期末試験の一週間前ということもあり、暖房の効いた室内は驚くほど静まり返っていた。本棚の陰にある個別学習机で、私は日本史の暗記用ノートを必死にめくっていた。最初の異変は、図書室に入ってから一時間ほど経った頃だった。下腹部の奥深くで、ツンと刺すような鋭い尿意の第一波が静かに走り抜けた。試験対策に集中するあまり、自販機で買った冷たい缶コーヒーを一気に二杯も飲み干したのが、完全に裏目に出てしまったのだ。
私はその日、学校指定のグレー of のウール混ブレザーに、赤と紺のチェック柄の厚手のプリーツスカート、八十デニールの黒タイツ、そして履き古した黒の革製ローファーを合わせていた。長い黒髪は後ろで上品なハーフアップにまとめ、焦げ茶色のリボン型のヘアクリップで留めていた。しかし、尿意の焦燥感から全身に噴き出した冷や汗のせいで、おでこの前髪や後れ毛がじっとりと濡れて皮膚に張り付いていた。顔面は血の気が完全に引いて白くなり、綺麗に引いていたはずの眉メイクやマスカラは涙と脂汗で滲んでヨレてしまい、鏡を見ずとも酷い顔になっているのが自覚できた。
静まり返った図書室では、わずかな椅子の軋み音や衣擦れの音すら大きく響いてしまう。一度席を立って物音を立てれば、周囲で必死に勉強しているクラスメイトたちの視線が一斉に自分に集まる。その社会的圧迫感という目に見えない檻が、私を木製の椅子という拷問台に縛り付けていた。
尿意は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、私の膀胱は限界まで膨らんで下腹部がギシギシと悲鳴を上げていた。私は机の下で、プリーツスカートの裾を両手の指先が真っ白になるほど強く握りしめ、タイツを穿いた内もも同士をこれでもかと密着させて激しく擦り合わせた。ローファーのつま先を床に強く押し付け、カカトをせわしなく上下させながら、お尻と股の筋肉を極限まで締め付けた。お腹の奥が痛むたびに「あと五分、この単元が終わるまで……」と頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返し、神に祈り続けた。
恥ずかしさと、静まり返った図書室の中で今にも粗相をしてしまうのではないかという絶望的な恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。自分の限界の太も目の震えと、スカートの裾が不自然に揺れ動くスリルの中で、心臓は早鐘のように脈打っていた。見てはいけないと思うのに、机の下で引き攣る自分の脚の動きから意識が離せない。
閉館を告げるチャイムが鳴った瞬間、私は立ち上がろうとしたが、その衝撃で尿道が限界に達し、その場でビクンと全身を強張らせて固まった。顔を真っ赤にし、涙を浮かべて教科書を股間に押し当てながら、極端な内股のすり足で女子トイレへ逃げるように駆け込んだ。個室の便座に滑り込み、温かい液体が一気に放出された瞬間の、頭の芯がとろけるような凄まじい解放感。今でも冷え切った冬 of の静かな部屋に入ると、あの時の太も目の震えと、下腹部がキューンと疼く感覚が鮮明によみがえるだた。
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