野外ロックフェスの砂塵
焼け付くような八月の午後二時過ぎ、広大な国営公園で開催された大型野外ロックフェスでのことだ。強烈な日差しが照りつけ、周囲は轟音と砂埃、精度ある数万人の観客の熱気で満ちていた。私はステージ移動の途中で売店の列の近くを歩いていたが、その時、簡易トイレの列の途中で、明らかに異様な様子で立っている女性が目に入った。……彼女の不自然な動きに私は釘付けになった。
年齢は二十代半ばのフェススタイルが似合う女性だった。タイトな黒のタンクキャップに、カーキのショートパンツ、そして泥だらけのスニーカーを履いていた。髪はポニーテールに結ばれていたが、行列がほとんど動かない中、彼女の表情は次第に絶望に染まっていった。
彼女はショートパンツの上から、両手で股間のあたりを挟み込むようにし、内ももをこれでもかと密着させながら、スニーカーのつま先だけで床を交互にトントンと叩き始めたのだ。フェス飯の激辛タコスと冷たいビールが、彼女の胃腸を刺激したのだろう。綺麗に施されたメイクの隙間から、冷や汗がダラダラと流れ落ちて首筋を濡らし、おでこの前髪がベタりと張り付いていくのが至近距離で見えた。
同行の友人に話しかける彼女の声は微かに震え、きつく噛み締めた唇は完全に血の気が引いて白くなっていた。「ねえ、まだかな……お腹が、本当にやばい……」と言いかけたまま、次の瞬間、下腹部を襲った激しい腹痛の波に耐えかねて、彼女は上体を深く折り曲げてその場にしゃがみ込んでしまった。
便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、彼女のお腹の中でゴロゴロと不快な音を立てて波打った。彼女は思わず「くっ……っ」と声を漏らし、お尻の括約筋を極限まで締め付けていた。見てはいけないと思いつつも、彼女の太も目が限界の緊張でがくがくと震え、ショートパンツの裾が揺れる様子から目が離せなかった。私の心拍数は跳ね上がり、手のひらに冷や汗がにじんだ。
しばらくして、ようやく仮設トイレの扉が開き、彼女はすり足のような不自然な足取りで、逃げるように簡易個室へと消えていった。今でもフェスの爆音を聞くたび、あの時の彼女の限界の震えと、漂っていた切迫した空気感を思い出して胸の奥が熱くなるだた。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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