中途採用の最終面接
冷たい雨が降る二月の木曜日、午後二時半過ぎの本社ビル最上階にある役員応接室でのことだ。私は中途採用の最終面接に臨んでおり、目の前には厳しい表情の社長と三人の役員が並んでいた。最初の異変は、面接官が私の職務経歴書に目を落とした瞬間だった。お腹の奥深くで、ゴロゴロと不穏な便意の第一波が走った。
緊張を和らげようとロビーの自販機で飲んだ冷たい缶コーヒーが、この最悪のタイミングで私の胃腸を刺激し、逃げ場のない便意へと変化したのだ。「面接が終わるまであと十五分……なんとか耐えるしかない」と自分に言い聞かせたが、それは地獄の始まりだた。
私はその日、上品な黒のリクルートスーツに、膝丈のタイトスカート、薄手の黒ストッキング、そして六センチヒールの黒パンプスを履いていた。髪はハーフアップに整えていたが、腹痛による冷や汗で額の生え際が濡れて前髪が額にはりついてしまった。メイクは綺麗に仕上げていたが、お腹の激痛が走るたびに顔から血の気が引き、目の前がチカチカと暗くなるのを感じた。
静まり返った面接室という、途中で席を立つことが極めて困難な社会的状況が、私を肉体的にも精神的にも限界へと追い詰めていく。少しでも動けば面接の評価が台無しになるという恐怖があり、私はテーブルの下で両手で膝を握りしめ、お尻の括約筋を極限まで締め付けた。ストッキングを履いた両脚をこれでもかと密着させ、両膝を左右に激しくもじもじと揺らしながら、パンプスのつま先だけで床を強く踏みしめて耐えた。
便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、下腹部をギシギシと収縮させた。お腹の中の不快な蠕動運動が面接官に聞こえないかという恐怖が頭を支配し、心臓は早鐘のように脈打っていた。「あと少し、次の質問が終わるまで……」と、頭の中で狂ったように残り時間を計算するが、面接官の言葉を聞くたびに焦りで思考が停止しそうになった。
面接が終わり、「ありがとうございました」と頭を下げた瞬間、私はお尻をかばう極端な内股の歩き方で部屋を滑り出た。一歩歩くごとに、お尻の奥で熱い塊が出口を求めて激しく自己主張し、涙目で顔を歪めながら多目的トイレへ駆け込んだ。便座に座り、お腹の毒素が一気に流れ出た時の、世界が救われたような解放感。今でも面接の時の緊張感を思い出すたび、あの時の冷や汗の冷たさと、股の奥がすくむような恐怖が鮮明によみがえるだた。
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