満員エレベーターの非常停止
ジリジリと太陽が照りつける八月の金曜日、午後五時半すぎの都内超高層オフィスビルのエレベーター内でのことだ。退社ラッシュということもあり、エレベーター内はすし詰め状態だった。私は一階に向かうために乗り込んだが、突然の地震感知によって、十五階付近でゴトンと非常停止した。狭い密室の中には換気扇の低い作動音だけが響き、エアコンが停止したことで内部の湿度は急上昇し始めた。最初の異変は、停止してからわずか数分後、お腹の底がズンと重くなるような鈍い便意の第一波だった。
昼食に同僚と食べた激辛のカレーが、この急停止による強烈な緊張と熱気によって、私の過敏な胃腸を直撃したのだ。復旧には少なくとも三十分以上かかるというアナウンスが流れ、私は頭の中が真っ白になるのを感じた。
私はその日、上品なネイビーのタイトスカートに、薄手の白いシフォンブラウス、そして七センチヒールの黒のパンプスを履いていた。髪はすっきりとハーフアップに結んでいたが、冷房の止まった密室で、腹痛による冷や汗と暑さによる汗が混ざり合い、ブラウスが背中にじっとりと張り付いていく。ファンデーションは汗で流れ落ち、アイメイクが滲んで目元が黒くヨレていくのが自覚できた。タイトスカートの下で、ストッキングを穿いた両脚をこれでもかと密着させ、お尻の門を極限まで引き締めた。パンプスのつま先で床を強く踏みしめ、内もも同士を強く擦り合わせるようにしてもじもじと身をよじる。
便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、下腹部をギシギシと収縮させた。エレベーター内という、逃げ場が完全に遮断された極限の社会的檻が、私を肉体的にも精神的にも限界へと追い詰めていく。お腹の中で暴れ回る熱い泥水のような塊を、極限まで引き締めたお尻の筋肉だけで必死にせき止めているのだ。一歩でも動けば全てが終わるという恐怖から、心臓は早鐘のように脈打ち、喉がカラカラに渇いて息を引き攣らせていた。
防災センターのスタッフが到着し、ドアが手動で開けられた瞬間、私はお尻をかばうように極端な内股になりながら、なんとか外へ這い出した。一歩歩くごとに、お尻の奥で熱い塊が出口を求めて激しく自己主張し、涙目で顔を歪めながらビル管理室横のトイレへ駆け込んだ。便座に座り、お腹の圧力が一気に解放された瞬間の、頭が真っ白になるほどの恍惚感。今でもエレベーターの閉まる音を聞くたびに、あのお尻の奥の激しい痛みと、汗でドロドロに崩れたメイクの感覚が鮮明によみがえるだた。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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