俺自身が満員電車で下痢に敗北した日の完全記録【本人談】
これは誰の目撃談でもない、俺(当時26)自身の敗北の記録だ。前日の深酒と朝のアイスコーヒーが引き金だった。8月の朝、いつも通りスーツに身を包んで家を出た時は、まさかこんなことになるとは思ってもいなかった。
通勤の満員電車、乗車して3駅目で腹の奥が「ゴロッ」と鳴った。この時点ではまだ余裕だった。第一波は誰にでも来る。やり過ごせばいい、そう自分に言い聞かせていた。窓の外を数えて気を紛らわせた。あと10駅、余裕、余裕。そう繰り返していた自分が今思えば呑気だった。
第二波は5駅目で来た。冷や汗が出るタイプの、明確な殺意を持った波だった。額に脂汗が滲み、つり革を握る手に力が入る。周りの乗客に体重を預けないよう、必死に踏ん張った。次の駅で降りようと決めたが、無情の車内アナウンス。「信号確認のため、しばらく停車します」。周りの乗客の顔が、やけにのんびりして見えた。この状況を知っているのは自分だけだという孤独感が、余計に腹の底を締め付けた。
ドアの前で、俺は人生で一番真剣に括約筋と対話した。「あと3分だけ頼む」「無理です」「頼む」「無理です」。腹の中で鈍い痛みが波打つたびに、膝が笑いそうになる。冷や汗が背筋を伝い、視界が一瞬白くなった。第三波は交渉の余地なく来た。腹の中で何かが決壊する感覚。全身の毛穴が開き、そして、静かに終わった。
スーツの下で何が起きたかは詳述しない。ただ、駅のトイレで俺は下着を処分し、ズボンを裏返して状況を確認し、コンビニで新しい下着を買い、会社に「体調不良」の連絡を入れた。全て事実だ。体調は最悪に不良だった。あの瞬間の絶望感は、今書いていても胃の奥が冷たくなる。人はここまで無力になれるのかと、妙に達観した気分にもなった。
あの日以来、俺は朝のアイスコーヒーをやめ、カバンに常に「非常用セット」を入れている。この記録が、いつかどこかの誰かの備えになることを祈る。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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