排泄物語

真夏のコミケ待機列にて、限界を迎えし戦士を見送った記録

投稿者: 積みプラの塔1分で読めます閲覧 2,0054.2(6件)

あれは一昨年の夏、8月のビッグサイト待機列でのことであった。朝6時から炎天下に並ぶこと3時間。気温は35度を超えていたように思われる。我々は皆、水分補給と尿意の均衡という高度な戦術を強いられていたのである。

私の2列前に、遠征組と思しき大きなキャリーケースの男がいた。30代半ばか。焼けた肌。Tシャツは汗で張り付いていた。彼は9時前から明らかに挙動が怪しくなり、貧乏ゆすり、屈伸、そして列の進行と仮設トイレの行列を交互に見つめる苦悶の表情を見せていた。その揺れ。あの膝の動き。限界のそれであった。仮設トイレは50人待ち。列を離れれば数千円の始発移動が水泡に帰す。人間、そういう状況では、本当に苦悶する。

彼は迷い、以外と長く粘ったが、9時20分、ついにキャリーを隣の男に託して走った。「頼む」「おう」という短い言葉のみで成立する連帯。オタク同士の絆。こうした瞬間にこそ、真の連帯が生まれる。涙ぐましい。

これぞ戦場の絆であった。彼は開場10分前に汗だくで帰還し、託した男と無言で頷き合っていた。何も起きなかった話で恐縮であるが、あの緊張感は歴戦の私をして手に汗握るものであった。夏の戦場での一コマ。人間の尊厳。その全てが詰まっていた。以上である。

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掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。

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