排泄物語

閉店間際のドラッグストアで下痢止めを求めた女性の結末

投稿者: 白衣とサンダル1分で読めます閲覧 1,3174.3(8件)

ドラッグストアで薬剤師をしております。忘れられないお客様の話をひとつ。

閉店15分前、スーツ姿の女性が駆け込んでこられました。40代前半、額に汗、明らかな冷や汗です。呼吸も浅い。髪はきっちりまとめられてて、ネイルも上品でした。でも右手でお腹を押さえてる仕草だけは、全てを物語ってました。「一番速く効く下痢止めをください」と。

お話を伺うと、接待の会食後で、ここまで3軒のコンビニのトイレが全て使用中だったとのこと。その間、いったい何分あるとお聞きしたら、20分と仰った。症状、いえ傷状を伺いながらも、私の判断は「薬より先にトイレです」でした。冷や汗の浮き方から、もう限界が見えてました。

当店の従業員用トイレをご案内しようとした、その時です。女性の表情が止まりました。あの、時間が止まったような顔は職業柄何度か拝見していますが、間に合わなかった方の顔でした。膝がかすかに揺れて、スーツのポケットから手が出てきた。脂汗がもう一層浮きました。

女性は静かに「大丈夫です。薬だけください」と仰り、会計を済ませ、不自然にゆっくりした歩調で退店されました。レジ袋には下痢止めと、ご自身で追加された生理用ではないタイプの吸水ショーツ。カウンターの奥で同僚が、そのシーンを見て目が合いました。何も申しませんでした。それが最善の接客だと思っております。

接待会食がいつだったか分かりませんが、今頃どこかで、あのスーツの女性はあの下痢止めを飲んでるんだと思うと、薬剤師冥利に尽きるような、そうでないような、複雑な気持ちになります。

― この話は、これにて ―

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掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。

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