排泄物語

トイレ貸出をめぐる、ある女性客との攻防と教訓

投稿者: 白衣とサンダル1分で読めます閲覧 1,5704.8(6件)

当店は原則、お手洗いの貸出をしておりません。過去に設備トラブルがあった為です。つまり私たちは、困ったお客様を見送ることが日常になってました。

ですが昨年の梅雨時、その原則を曲げた日がありました。夕方、20代後半の女性が青い顔でご来店され、生理用品の棚の前でうずくまってしまわれたのです。濡れた髪、手に小さなビニール傘。雨の中、どこか遠くから駆けてきたのか、息も乱れてました。お声がけすると「お手洗いをお借りできませんか、お腹が」と消え入りそうな声。規則をご説明しかけて、やめました。

手が震えておられたからです。髪の毛の生え際の冷や汗。そして内ももを合わせる仕草。下腹に向かう視線。バックヤードのトイレにご案内し、彼女は30分出てこられませんでした。店舗の中で待ってる時間、私は奥で息をしてるのか聞き耳立ててました。音は何も聞こえませんでしたが、その静寂も深刻でした。整腸剤とお水を差し上げると、何度も頭を下げて「冷房で毎年こうなるんです」と。

後日、その方が菓子折りを持って再来店されました。それは予想外でした。以来、当店では店長と相談し「緊急時は薬剤師判断で貸出可」という内規ができました。あのお嬢さんが来なかったら、今もこの店は「貸出禁止」のままだったんです。

傷状、いえ症状は待ってくれません。あの日の判断は間違っていなかったと思っています。感謝してます、あのお嬢さんに。

― この話は、これにて ―

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掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。

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