帰省の高速バス6時間、節約した2000円の代償を尻で払った記録
就活が終わって、お金がなかったので新幹線ではなく高速バスで帰省した時の話です。東京から実家まで6時間、3列シートの夜行ではなくて昼行の4列シートの便でした。新幹線より2000円くらい安かったからです。座席に座った時は、正直これで浮いた分は帰省中のお小遣いだと喜んでいました。その判断を、僕は途中のトイレ休憩の後、心の底から後悔することになります。
この判断を、僕は途中のトイレ休憩の後、心の底から後悔することになります。出発前に食べた立ち食いそばか、前日の飲み会の残りダメージか、原因は分かりませんが、2回目の休憩(SAで15分)の1時間後くらいから、お腹が本格的におかしくなりました。その時点で僕の内臓は既に悲鳴を上げ始めていたのです。
このバス、トイレなしです。次の休憩まで約90分。僕は窓側の席で、通路側には知らないおじさんが寝ています。冷や汗をかきながら、波が来るたびに深呼吸でやり過ごしました。車窓を流れる景色を見る余裕なんて、もうどこにもありませんでした。空高く飛ぶトンビさえも、僕の苦しみを知らないほかの世界の存在に見えました。
波って本当にあるんです。5分苦しんで10分楽になって、また5分苦しむ。最初の波は歯を食いしばればなんとかなるレベルでしたが、3セット目あたりからは膝が震えるほどの強さになって、頭の中は「次のSAまで持つか」の計算でいっぱいでした。真剣に「運転手さんに言うべきか」を考えましたが、満員のバスを止める勇気は出ませんでした。下腹の鈍痛は第二波で鋭い痛みへと変わり、そして第三波では全身が硬直するほどになりました。
あと何キロ。カーナビもないのに、頭の中だけは地図を描いていました。次のPA、次のSA。そこまで、あそこまで。膝の間に力を入れ、座席のシートをぎゅっと握り、呼吸も浅くなってきました。隣のおじさんは相変わらず寝ています。羨ましかった。心のどこかで「今ここで事が起きたら」という恐怖と、それとは別の奇妙な興奮が混在していました。
結局、限界の2歩手前くらいでPAに到着して、寝ているおじさんを飛び越える勢いで通路に出てトイレに駆け込みました。間に合いました。座席に戻った瞬間、全身から力が抜けていくのが分かりました。その解放感は、就活に受かった時よりも大きかったかもしれません。
でも節約した2000円の何倍もの寿命が縮んだと思います。次の帰省は新幹線にします。トイレがついてる乗り物は、それだけで運賃の価値があります。就活が終わってもまだまだ人生の授業料は続くようです。
― この話は、これにて ―
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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