夜間講座前のトイレ行列、隣の席のOLさんの尊厳が試された20分
働きながら資格予備校通ってる24歳っす。うちの校舎、駅前の雑居ビルの5階なんすけど、トイレが各階に男女1つずつしかないんすよね。19時の構座前は仕事帰りの受講生が一斉に来るんで、女子トイレとか普通に行列できるんすよ。
あの日、エレベーターで一緒になったのが、いつも隣の席のOLさん(たぶん20代後半、いつもきっちりしたパンツスーツで、髪をきつく一つに結んでる人)でした。会社で会議が連発してトイレ行くタイミング逃したまま直行したらしくて、ビル着いた時点でだいぶヤバそうだったんすよね。顔が強張ってて、鞄を両手できつく抱えてたんす。5階のトイレ見たら3人待ち。1人あたり体感5分。彼女、小声で「無理、計算合わない」ってつぶやいてて。額に汗が浮いてるのも見えました。
そこから彼女の各階トイレ巡りが始まったんす。4階、別の学校の生徒っぽい人が2人待ち。この時点でもう足踏みが止まらなくなってました。3階、貸し会議室のフロアで1人待ち。階段の踊り場で壁に手ついて動き止まってるの見た時は、マジで声かけるべきか迷いました。顔、真っ白だったんすよ。呼吸も浅くなってるのが分かるくらいで。
最初、5階で並んでた時はまだ我慢できる感じだったと思うんすよね。表情にもそこまで余裕なくなかったし。でも階を降りるごとに焦りが増していって、3階の踊り場に着いた頃には完全に第二波、第三波って感じでした。手すりを握る手が白くなってたのも見えたっす。俺も自分の受験時代を思い出して、他人事じゃないなって胸が痛くなったの覚えてます。
結局2階の不動産屋の横のトイレが空いてたらしくて、彼女は授業に10分遅れで滑り込んできました。表情からして間に合ったんだと思うっす。先生に「体調悪いなら無理すんなよ」って言われて「はい」って言ってましたけど、違うんすよね。次の週から彼女、ビルの各階のトイレ配置をメモした付箋をテキストに貼ってました。簿記より先に覚えるべきはあれっすね。あの日の彼女の必死な横顔、なぜか今でも忘れられないんすよ。あの階段の踊り場を通るたび、俺も無意識に彼女の姿を探しちゃうくらいには、頭に焼き付いてる出来事っす。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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