公開摸試の日、択一より先に膀胱が限界を迎えた
アラサー社会人が働きながら公務員試験を目指すとどうなるか。答え、トイレに行く時間すら計画的に配分できない人間になる。5月の公開摸試の話だ。GWが明けた直後、新緑の季節だった。世間では連休ムードが余韻を残してるのに、予備校の空気は一気に引き締まった時期だ。
会場は予備校の本校舎、受験者200人に対して女子トイレの個室は3つ。そう、たった3つだ。教養試験と専門試験の間の休憩は20分しかない。残酷な設計だと思ったのは初日からだった。あの時から、この試験の辛さが予見できてたんだと、今になって思う。
並んだ時点で私の前に11人いた。1人2分で計算して22分。無理。時間配分の失敗は答練で散々やらかしてきたのに、まさかトイレの行列でも同じミスをするとは思わなかった。あの瞬間、どれだけ完璧に勉強しても、トイレ問題の前には無力だと悟った。諦めて席に戻った私は、専門試験140分を満タンの膀胱で戦うことになった。
憲法のあたりまでは平気だった。行政法で怪しくなり、下腹のあたりに鈍い圧を感じ始めた。ミクロ経済の計算問題に入る頃には数字が頭に入らなくなって、脚を組み替える回数だけが増えていった。ペンを握る手も、妙に力が入ってるのに気づいた。マークシートを塗るのも、いつもより時間がかかってる。シャープペンの芯が何度も折れた。残り30分、机の下で膝を強く合わせながら、マークシートを塗る手が震えた。冷や汗が背中を伝う感覚もあった。内ももの筋肉が痙攣してるような、そんな違和感が終始続いた。
試験終了の合図と同時に廊下に飛び出して、また行列。最後尾で足踏みしながら、内ももに力を込めて耐えていたのに、正直ちょっとだけ漏れた。その一瞬が永遠に感じた。
パンツにしみる感覚があった。頭が一瞬真っ白になって、誰にも言えないので、ここに書く。個室に入った瞬間、全身の力が抜けた。判定はBだった。専門は手応えがあったのに、膀胱のせいで足を引っ張られたんだと思う。
膀胱はF判定。次の摸試は水分を朝から絶つと決めた。朝、一口の水も飲まずに出勤するその感覚。口の中がからからになる苦しさを想像する。
それはそれで頭が働かない気もするが、あの行列に並ぶよりはましだと今は思っている。講師に相談したら、「トイレ対策は試験の一部」と笑われた。確かに、そうなんだろう。
― この話は、これにて ―
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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