排泄物語

自習室の席を守るために水を絶った女の末路

投稿者: 択一式の呪い1分で読めます閲覧 1,9414.1(16件)

うちの予備校の自習室は席取り戦争が異常だ。朝9時の開放と同時に埋まり、一度立つと荷物を置いてても圧を感じる空気がある。それは入試直前期になると顕著になる。受験者の焦りと緊張が、椅子一脚の奪い合いに変わる。

特に窓際のコンセント付きの席は聖域だ。1月の直前期、私はその聖域を確保するため、朝から水分を断つという愚策に出た。トイレに立つ回数を減らせば席も守れるし勉強時間も伸びる、という理屈だ。専門記述の演習を6時間、水なしカフェインなしでやり切った。頭は冴えてるはずなのに、体は渇ききってた。唇も乾いて、舌も砂のような感覚だった。

ここまでは計画通り。喉はカラカラだったが、席は死守できたし、集中力も悪くなかった。狂ったのは夜だ。帰宅して安心した反動で、冷蔵庫の麦茶を1リットル近く一気飲みした。喉を鳴らして飲む自分を、どこかで少し危ないと思いながらも止められなかった。常識的な判断なんて吹き飛んでた。あの瞬間、口内の渇きを潤すことだけが全てだった。

乾いた砂に水を撒くようなものだった。深夜2時、腹の奥からグルグルと嫌な音がして、腹が壊れた。冷や汗と鳥肌が同時に来て、布団を跳ね除けてトイレに駆け込んだ。最初の波、次の波、そしてもう一度。3回目の時点で、自分の愚かさを呪った。

脱水気味の体に急に水分を入れると腹を下すと、あとで知った。トイレと布団を5往復して、下腹の重だるさが明け方まで続いた。翌日の講義は最前列で青い顔をして受けた。講師に「顔色悪いけど大丈夫?」と心配される始末。隣の席の受講生にも「大丈夫ですか」と声をかけられた。

勉強法の本には載っていない教訓を書いておく。席は守れても腸は守れない。水は、飲め。それが人間らしい生き方だ。あの夜の自分に言ってやりたい。次は同じ過ちは繰り返さない、そう心に決めた。

― この話は、これにて ―

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