試験期の夜、多目的トイレの前で立ち尽くした女子学生
試験期の図書館は満席の緊張で、空気が乾いた紙のようにぴりぴりしております。2月初旬の夜9時ごろのことでした。真冬の冷気が窓際から伝わり、館内は静寂に包まれていました。1階の女子トイレが混み合い、廊下の奥の多目的トイレには「故障中」の貼り紙が下がっておりました。その貼り紙は、一枚の文字通りの「死刑宣告」でございました。
私はカウンターで返却処理をしながら、その貼り紙の前で立ち尽くす女子学生に気づきました。4年生の常連さんで、就活の話をしたことがある子です。黒のリクルートコートを羽織り、いつも凛とした佇まいの方でした。その夜も、その凛とした姿勢は変わりませんでした。ただ、その足元の動きだけが、異なっていました。
彼女は貼り紙を二度読み、女子トイレの行列を見て、また貼り紙を見ました。装丁だけで中身が期待と違うと知った時の顔でした。その顔の色が、刻一刻と変わっていくのを、私は目撃しておりました。行列に並び直した彼女は、両足を交互に踏みかえ、鞄を胸に抱え、額にはうっすら汗が浮いておりました。その汗は、試験勉強による疲労のものではなく、内なる切迫感によるものでございました。
列があと2人というところで、ふいに動かなくなりました。肩が小さく震えているのが見えました。その震えは、恐怖ではなく、必死の我慢の表現でございました。
足元に、小さな水たまりがゆっくり広がるのが、カウンターからでも分かってしまったのです。私は思わず息を止めておりました。その瞬間が、時間を止めてしまったかのような気さえしました。
私は見なかった顔で立ち上がり、清掃用のモップと、落とし物用に保管していた未使用のタオルを持って、なるべく事務的に歩いていきました。彼女は泣いていました。その涙を見なかったことにするのも、私の仕事の一部でございます。その後、彼女は試験に合格されたと聞きました。その知らせが、私にとっての救いでございました。
試験期の図書館には、閲欄室の物語には残らないページがあるのでございます。
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