カヌー体験の河川と岸辺の葛藤
うららかな初夏の5月、午後2時頃、山間部を流れる清流でのカヌー体験ツアーでのことだ。気温は22度前後と心地よく、私は数人の参加者と一緒にガイドの後ろを漕いでいた。 ……その時、前方のカヌーに乗っていた女性の様子がおかしいことに気がついた。
年齢は20代前半くらい。水着の上からオレンジ色のライフジャケットを着て、足元はマリンシューズを履いていた。黒髪をポニーテールに結んだ、いかにも活発そうな女性だった。 最初は元気に漕いでいた彼女だが、ツアー開始から40分が過ぎた頃から急にペースが落ち、パドルを握る手が止まりがちになった。
彼女の様子がおかしいのはすぐに分かった。 カヌーの狭い座席の上で、両膝をぴったりとくっつけ、内ももをもじもじと擦り合わせているのだ。 川の冷たい水しぶきがダイレクトに身体を冷やし、急激な尿意を引き起こしたようだった。 顔からは完全に血の気が引き、きまじめそうな表情が焦燥感で強張っている。手は無意識にライフジャケットの裾の下から下腹部を強く押さえていた。
カヌーの上という、完全に水上に孤立した逃げ場のない空間。 もしここで限界を迎えてしまえば、全員の目の前で水没(漏尿)してしまう。その究極の恐怖が、彼女の表情を強張らせていた。 見てはいけないと思いつつも、彼女が波が襲うたびにカヌーの座席で身を固くし、震える姿から目が離せなかった。私の心臓はドクンと激しく脈打っていた。
尿意の第ニ波が彼女を襲う。 彼女はついに耐えかねて、ガイドに向かって「すみません、トイレ行きたいです!」と叫んだ。 ガイドの指示でカヌーを川岸の浅瀬に寄せた瞬間、彼女はまだ完全に接岸する前に水中に飛び出し、お尻をかばうように内股のまま近くの茂みの奥へと消えていった。
今でも川のせせらぎを聞くたび、あの時の水上での張り詰めた彼女の表情と、忘れられない興奮を思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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