遺跡ツアーの石畳と古びた階段
秋の爽やかな10月の午前11時前、歴史的な城跡や遺跡が残る公園でのことだ。気温は18度前後と過ごしやすく、私は石造りの遺跡を見学するガイドツアーに参加していた。 ……その時、遺跡の少し薄暗い通路の影で立ちすくんでいた女性が目に入った。
年齢は20代半ばくらい。白いコットンスカートに、薄手のグレーのカーディガン。足元は歩きやすいフラットシューズを履いていた。髪はハーフアップに綺麗にまとめ、小さな手提げ袋を持っていた。 最初は楽しげに写真撮影をしていた彼女だが、突然お腹を抱えるようにして動きを止めた。
彼女の顔から、みるみるうちに血の気が引いていくのが遠目にも分かった。 一歩を踏み出す瞬間にビクッと全身を震わせ、フラットシューズの踵をガタガタと震わせながら内股で固まっている。 スカートの生地を両手で強く掴み、下腹部を圧迫するように前かがみになっている。冷たい脂汗が額に浮かび、眉が苦痛で八の字に歪んでいる。間違いない、急激な腹痛と便意の波に襲われているのだ。
遺跡の中には近代的なトイレ設備がなく、一番近い公衆トイレまでは徒歩で15分はかかる。その足元の悪い石畳の檻が、彼女を精神的にさらに追い詰めているようだった。 見てはいけないと思いつつも、彼女の白いスカートの下の震える脚と、漏れそうなのを必死で耐える不自然な姿勢から目が離せなくなり、私の心臓はドクンと激しく鼓動を刻んだ。
便意の第ニ波が彼女を直撃した。 「うぅ……」と喉の奥で押し殺したような吐息が聞こえ、彼女はスカートの生地をギュッと握りしめ、お尻の筋肉を極限まで締め付けている。 額から流れる汗を拭う余裕すらなく、ただ目を見開いて地面の一点を見つめていた。
ついに限界を迎えたのか、彼女はツアーの列から外れ、お尻をかばうように内股で、遺跡の奥にある崩れかけた古い石壁の陰へと長る(這う)ようにして駆け込んでいった。 今でも古い遺跡を見るたび、あの時の彼女の限界の表情と、石壁の影に消えていった必死の後ろ姿を思い出して胸が熱くなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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