排泄物語

川沿いの花火大会と土手の暗がり

投稿者: 屋外シチュエーション・エピソード集(外)1分で読めます閲覧 5334.0(3件)

8月の蒸し暑い花火大会の夜、河川敷の土手の上でのことだ。周囲は数万人を超える花見客で埋め尽くされ、夜空に打ち上がる花火をみんなで見上げていた。 ……その時、土手の少し離れた暗がりの近くで立ちすくんでいた浴衣姿の女性が目に入った。

年齢は20代前半くらい。ピンク色にアジサイの柄が描かれた華やかな浴衣に、黄色の帯をきつく結んでいた。髪を綺麗にアップにまとめ、手には小さな巾着袋を持っていた。 最初は楽しげに友人と話していた彼女だが、突然お腹を抱えるようにして動きを止めた。

彼女の顔から、みるみるうちに血の気が引いていくのが遠目にも分かった。 一歩を踏み出す瞬間にビクッと全身を震わせ、下駄を履いた足元をもじもじと交差させ始めたのだ。 浴衣というのは、お腹周りを帯で強く圧迫しているため、一度便意を感じると逃げ場がない。 時折、ふぅーっと深く息を吐きながら、内ももをすり合わせる彼女の表情は完全に強張っていた。

見てはいけないと思うのに、私は彼女の後ろ姿から目が離せなくなった。 うなじから覗く白い肌には、暑さとは違う冷や汗がじわりと浮かんでいる。 「大丈夫?」と心配する友人に、彼女は首を振るのが精一杯のようで、右手で巾着を強く握りしめ、左手は無意識に帯の結び目あたりをギュッと押さえていた。

土手の周囲にはトイレ設備がなく、一番近い仮設トイレまでは人混みをかき分けて30分はかかる。その足元の悪い順路の檻が、彼女を精神的にさらに追い詰めているようだった。 便意の第ニ波が彼女を直撃した。 彼女はビクッと体を震わせると、下半身を極端に折り曲げるようにしてその場にうずくまってしまった。 「もう、むり……っ」と涙交じりの掠れた声が聞こえ、浴衣の裾が不自然に揺れた。

結局、彼女は友人に抱えられるようにして列を離れ、お尻をかばうように内股のまま、土手の奥にある立ち入り禁止の草むらの向こうへと消えていった。 今でも花火の打ち上がる大きな音を聞くたび、あの時の彼女の限界の表情と、漂っていた甘い香水の香りを昨日のことのように思い出す。

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