帰省ラッシュの渋滞バス
蒸し暑いお盆の午後4時過ぎ、帰省客で満席となった長距離高速バスの車内でのことだ。事故渋滞のため、バスは予定ルートを大幅に外れ、次のサービスエリアまであと1時間以上かかるという絶望的なアナウンスが流れた。私は通路側の席に座っていたが、その時、通路を挟んだ斜め前の窓際席に座っていた若い女性の様子がおかしいことに気づいた。
年齢は20代前半のOL風の女性。薄手の白いレースブラウスに、光沢のあるパステルブルーのロングフレアスカートを合わせ、足元はストラップ付きのヒールサンダルを履いたいた。髪はきれいに編み込また三つ編みで、耳元にはパールのイヤリングが光っていた。しかし、渋滞が長引くにつれ、彼女は何度もシートの上で腰を浮かせ、フレアスカートの裾を両手でギュッと掴んでは股間に押し当てるようになった。
彼女の顔はみるみる土気色になり、額からは大粒の汗が流れ落ちていた。汗でアイブロウとファンデーションが混ざり合い、ドロドロと頬を伝っている。彼女はサンダルを履いた両脚をきつくクロスさせ、内ももを激しく擦り合わせながら、全身を小刻みに震わせていた。尿意の波が押し寄せるたび、彼女は目を固く閉じ、奥歯を噛み締め、細い首の筋を張らせて「うぅ……」と小さく吐息を漏らしていた。シートの肘掛けを握りしめる手の指先は白く強張り、震えを隠すように脇をきつく締めている。
冷房の冷気が彼女の膀胱をさらに冷やし、尿意はもはや限界を超えているようだった。バスの車内という、密閉された逃げ場のない社会的状況が、彼女を精神的にも追い詰めていた。隣には見知らぬ乗客が座っており、声を上げて助けを求めることもできない。彼女は心の中で神に祈り、時系の針を見つめて絶望的な時間を計算しているのがその背中から痛いほど伝わってきた。
私は彼女の限界に達した身体の動きから目が離せなかった。スカートの生地が彼女の脚の動きに合わせて不自然に揺れ、内ももを締め付けるたびに生じる衣擦れ。見てはいけない背徳感と、彼女の極限状態の気配に、私の心臓はバクバクと高鳴り、手のひらに冷や汗がにじんだ。
ようやく次の臨時バス停で停車した瞬間、彼女は隣の乗客を押し分けるようにして立ち上がった。しかし、歩いた衝撃で限界に達したのか、通路で一瞬「ひっ……!」と声を上げ、腰を低く落として動きを止めてしまった。両手でスカートを強く押さえ、涙目で体を震わせながら、ゆっくりとステップを降りて公衆トイレへと消えていった。今でも高速道路の渋滞に巻き込まれるたび、あの時の彼女のフレアスカートの揺れと、張り詰めた表情を思い出して胸がゾクゾクする。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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