役員プレゼンと見えない脂汗
うだるように蒸し暑い七月の木曜日、午後二時過ぎの大手通信会社の本社役員会議室でのことだ。室内の空調は二十二度に設定され、肌寒いくらいに冷やされていたが、新事業立ち上げの最終決裁の場とあって、張り詰めた緊張感が充満していた。私はプロジェクターの操作担当としてスクリーンの傍らに控えていた。……その時、プレゼンターを務めていた企画部の主任、新城さんが視界に入った。
彼女は三十代前半の洗練された女性で、光沢のあるシルクの白いブラウスに、ウエストがきゅっと締まった膝丈のタイトな黒スリットスカート、そして極薄のベージュストッキングに黒の八センチヒールパンプスを履いていた。髪は後ろで一本にきっちりとまとめられ、シルバーの細い腕時計が知的な印象を与えていた。しかし、社長からの容赦ない質問が始まった瞬間、彼女の完璧な佇まいに微かな亀裂が入った。彼女は突如、説明の言葉を詰まらせ、資料を握る指先が白くなるほど力を込めたのだ。
エアコンの冷気と極度の緊張のせいか、彼女の胃腸が悲鳴を上げ始めたらしい。至近距離で見つめる私には、彼女の額から流れる脂汗が、綺麗に整えられたファンデーションを浮かせ、眉のメイクをじわじわと滲ませていく様子がはっきりと見えた。彼女はタイトスカートの下で、ストッキングの擦れ合う音が出るほど両脚をきつく交差させ、パンプスの爪先を絨毯に押し付けてお尻の括約筋を必死に締め付けていた。腹の底でゴロゴロと不快な音が暴れるたびに、彼女の肩がビクンと跳ね上がり、呼吸が浅く荒くなっていく。
「この質問さえ乗り切れば……あと五分……」と、彼女の薄い唇は噛み締められて完全に血の気が引いていた。役員たちの冷徹な視線が集まる中、もし中途退席すればキャリアに傷がつくという社会的な圧力が、彼女をその場に繋ぎ止めている。便意の波は容赦なく押し寄せ、彼女はスカートの上から片手で下腹部を隠すように押さえ、腰を少し引いた姿勢で質問に答えた。見てはいけないと思いつつも、がくがくと震える彼女の太ももと、お尻をきゅっと絞るような仕草から目が離せなかった。私の心拍数も高まり、喉が激しく渇いた。
コンペが終了した瞬間、新城さんは足早に頭を下げると、お尻の痛みに耐えるように背筋を少し丸め、不自然な内股のまま競歩のような早足で会議室を飛び出していった。廊下の奥の化粧室へ滑り込む彼女の背中を見送りながら、私は今でもその緊迫した瞬間と、彼女が漂わせていた圧倒的な切迫感を忘れることができない。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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