祝福の席の耐え難き時間
華やかな六月の日曜日、午後一時半過ぎの都内一流ホテルの結婚披露宴会場でのことだ。シャンデリアが眩しく輝く室内は、百人以上の参列者の笑顔と歓声で満ち溢れていたが、エアコンの風が新婦の友人席である私のもとに直接吹き下ろし、ドレスに包まれた体をじわじわと冷やしていた。最初の異変は、主賓の祝辞が始まってすぐのことだった。下腹部の奥深くで、つんと突き刺すような鋭い尿意の第一波が走った。
「新郎新婦の生い立ちビデオが終わるまで、あと四十分……それから歓談になれば席を立てる」と自分に言い言い聞かせたが、それが終わりのない試練の始まりだた。披露宴という、乾杯やスピーチが続く厳粛な儀式の最中に、友人の代表スピーチを控えた私が席を立つことはマナー違反とされ、周囲の注目を浴びる恥ずかしさが私をその場に縫い付けた。私はその日、光沢のあるライトピンクのサテン地ワンピースに、薄手のストッキング、そしてシルバーの7センチヒールパンプスを履いていた。髪は華やかにハーフアップに巻いていたが、尿意の焦燥感から全身に噴き出した冷や汗のせいで、首元の襟足がじっとりと濡れて皮膚にはりついていた。
会場内は静まり返り、感動的なスピーチが響いている。尿意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、私の膀胱は破裂しそうなほどに膨らんで激痛を訴えていた。私はテーブルの下で、パンプスを履いた両膝をぴったりとくっつけ、内もも同士を強く密着させて震える脚を抑え込んだ。シルバーパンプスの爪先を床に強く押し付け、踵を交互にせわしなく上下させながら、お尻の括約筋を極限まで締め付けた。ドレスの生地を握りしめる両手は冷たく湿り、指先は白く震えていた。顔からは完全に血の気が引き、綺麗に施されたメイクは冷や汗でヨレていた。
「あと十五分、次のスピーチが終わるまで……」と、頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返すが、拍手が起こるたびに全身にびくっと震えが走り、尿道が限界を訴えた。恥ずかしさと、この神聖な場所で粗相をしてしまうのではないかという恐怖が胸を支配し、心臓は早鐘のように激しく脈打っていた。喉は砂漠のようにカラカラに渇いていた。
ようやくビデオ上映が終了し、会場内が明るくなった瞬間、私はお尻をかばうように極端な内股のまま立ち上がった。すり足のような不自然な歩幅で、会場の外の化粧室へと急いだ。個室の便座に座り、凄まじい勢いで放出された瞬間の、脳がとろけるような圧倒的な解放感。今でも結婚式のファンファーレを聞くたびに、あの時の極限の冷や汗と股の奥がすくむような恐怖を思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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