排泄物語

書架の陰の静かな戦い

投稿者: 生成エピソード集(エピソード601〜650)2分で読めます閲覧 6084.0(2件)

肌寒い十月の雨の土曜日、午後二時過ぎの神田神保町にある大型専門書店の地下二階書庫でのことだ。静まり返ったフロアには古い紙の匂いと本の背表紙が並び、熱心に本を探す少数の客が静かに歩いていた。地下書庫の空調はやや弱く、少し蒸し暑いような湿気が漂っていた。私は歴史書の棚の前で資料を探していた。……その時、少し離れた郷土史の棚の前で、奇妙な姿勢をとっている一人の女性が目に入った。

彼女は二十代後半の非常に知的な文学少女風の女性で、モスグリーンのロングニットカーディガンに、細かいプリーツの入った黒のロングスカート、そして茶色の革製ショートブーツを履いていた。髪はハーフアップに美しく結ばれ、眼鏡をかけていた。しかし、彼女は本を手に取ったまま、その場から一歩も動けなくなっていた。

彼女は持っていた重い専門書を両手で下腹部に強く押し当て、上半身を折り曲げるようにして立っていた。突然の激しい腹痛が彼女を襲ったのだろう。書店の静寂と、冷たい雨による冷えが彼女の胃腸に深刻なダメージを与えたらしい。至近距離で見つめる私には、彼女の眼鏡の奥の瞳が涙で潤み、額から流れ出た冷や汗で前髪が張り付いているのがはっきりと見えた。彼女はプリーツスカートの下で、両脚を執拗に交差させ、ブーツの踵を交互に上下させてお尻の括約筋を極限まで締め付けていた。お腹の中でゴロゴロと不快な音が暴れるたびに、彼女の体がビクンと強張る。

「あと一冊見つければ、すぐに会計してトイレへ……」と、彼女の唇は白くなるほど強く噛み締められていた。しかし、広い書店の地下という、トイレがどこにあるかもすぐには分からない社会的檻が、彼女をその場に縛り付けていた。便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、彼女は本を押さえたまま、がくがくと震える太ももを必死に抑え込んでいた。見てはいけないと思いつつも、彼女の必死の抵抗から目が離せず、私の心拍数も高まり、喉が激しく渇いた。

彼女はついに本を棚に戻すと、お尻をかばうように極端な内股の姿勢で、這うようにしてエレベーターの方向へ向かっていった。今でも古い本屋を訪れるたびに、あの時の彼女の限界の表情と、漂っていた切迫した空気感を思い出して胸の奥が熱くなる。

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