美容室のケープの下の冷や汗
汗ばむような五月の土曜日、午後三時過ぎの表参道にある有名ヘアサロンでのことだ。店内は明るい光が差し込み、お洒落な音楽が流れる中で多くの女性客が施術を受けていた。シャンプー台とカットスペースの間には薄いパーテーションがあるのみで、周囲の視線は通りやすい。私は隣の席でカラーリングの浸透を待っていた。……その時、鏡の向こうの席でカットを受けていた一人の女性が目に入った。
彼女は二十代半ばの非常に可愛らしい女性で、白いフェミニンなレースのブラウスに、イエローの膝丈スカート、そして素足にフラットサンダルを履いていた。髪はカットのために濡らされ、肩には黒いナイロンのカットケープが掛けられていた。しかし、スタイリストが髪を切り始めてからしばらくして、彼女の様子に明らかな異変が現れた。
彼女はケープの下で両手で股間のあたりを強く押さえるようにし、膝をぴったりとくっつけて内ももを激しく擦り合わせ始めたのだ。施術前に出された冷たいアイスティーが、エアコンの風で冷やされた彼女の膀胱を急激に刺激したのだろう。至近距離で見つめる私には、彼女の額からにじみ出る脂汗が、丁寧に塗られたファンデーションを浮かせ、眉のメイクがじわじわとヨレていく様子が見えた。
「あとどのくらいで終わりますか……」という彼女の震える声が聞こえた。ヘアカットの最中という、途中で席を立つことが極めて困難な社会的状況が、彼女を追い詰めていく。尿意の波が押し寄せるたび、彼女の太ももががくがくと細かく震え、ケープの裾が不自然に揺れていた。見てはいけないと思うほど、彼女の必死の抵抗に目が引きつけられ、私の鼓動は激しく脈打ち、喉が異常に渇いた。
ようやくカットが終わり、スタイリストがケープを外した瞬間、彼女は「すみません、お手洗いを……」と呟くと、お尻をかばうように極端な内股の姿勢で、這うようにして店の奥の洗面所へ消えていった。今でも美容室のハサミの音を聞くたびに、あの時の彼女の限界の表情と、漂っていた切迫した空気感を思い出して胸の奥が熱くなる。
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