スクリーン裏の不穏な衝動
肌寒い十一月の土曜日、午後四時過ぎの有楽町にある大型映画館でのことだ。二時間半に及ぶ超大作のクライマックスシーンが上映されており、劇場内は観客たちの緊張した静寂とスピーカーからの大音響で満たされていた。私は上映中に通路側の座席に座って映画を観ていた。……その時、三つ前の席の列の端に座っていた一人の女性が目に入った。
彼女は二十代後半の可愛らしい女性で、フリル付きの白いニットに、ブラウンのロングプリーツスカート、そして黒のタイツにフラットシューズを履いていた。髪はポニーテールに結ばれ、小さなファー付きのバッグを膝に乗せていた。しかし、映画の最も盛り上がるシーンに入った瞬間、彼女の様子に劇的な変化が訪れた。
彼女は膝の上のバッグを両手で強く抱え込むようにし、それを下腹部に強く押し当てたのだ。突然の激しい腹痛が彼女を襲ったらしい。劇場の冷房による冷えと、上映前に飲んだ冷たいドリンクが彼女の胃腸に致命的なダメージを与えたのだろう。至近距離で見つめる私には、彼女の額からにじみ出る脂汗が、映画のスクリーンの光に反射して白く光り、メイクがヨレている様子がはっきりと見えた。彼女はプリーツスカートの下で、タイツを履いた両脚を激しく擦り合わせ、シューズの爪先を床に押し付けてお尻の括約筋を極限まで締め付けていた。お腹の中でゴロゴロと不快な音が暴れるたびに、彼女の肩が激しく揺れ、呼吸が浅く荒くなっていり。
「あと十分で映画が終わる……それまで席を立てない」という葛藤が、彼女の表情を歪ませていた。映画館の暗闇の中とはいえ、周囲は集中してスクリーンを見つめており、その前を遮って立ち上がる恥ずかしさが彼女を縛り付けている。便意の波は容赦なく押し寄せ、彼女はカバンを押さえたまま、がくがくと震える太ももを必死に抑え込んでいた。見てはいけないと思いつつも、彼女の必死の我慢から目が離せなかった。私の心拍数も高まり、喉が激しく渇いた。
映画が終わり、スタッフロールが流れ始めた瞬間、彼女は周囲の迷惑も顧みず立ち上がったが、お尻をかばうように極端な内股の姿勢のまま、這うようにしてロビーのトイレへと消えていった。今でも映画館のチャイムを聞くたびに、あの時の彼女の限界の表情と、漂っていた切迫した空気感を思い出して胸の奥が熱くなる。
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