常務プレゼンの長い10分
冷たい雨がシトシトと降る11月の木曜日、午後3時過ぎの本社2階の第1会議室でのことだ。重要な来期予算の進捗発表とあって、室内には常務をはじめとする会社の重役たちが勢揃いし、空気は氷のように冷たく張り詰めていた。私は次のプレゼンターとして演台の脇に立ち、自分の出番を待っていた。最初の異変は、前のアシスタントの発表が終了し、自分の名前が呼ばれたまさにその瞬間だった。下腹部の奥深くでズンと重く響くような、不穏な便意の第一波が走ったのだ。
昼食に気合を入れるために食べた油っこい激辛スパイスカレーが、この最悪の緊張状態と重なり、急速に私の胃腸を直撃したのだ。「発表が終わるまであと15分……なんとか耐えるしかない」と心の中で祈るように自分と言い交わしたが、それは終わりのない攻防の幕開けだた。
私はその日、フォーマルなオフィスカジュアルとして、ベージュのタイトなリブニットワンピースに、黒のシアーストッキング、そして7センチヒールの黒いエナメルパンプスを履いていた。髪はハーフアップにきっちり整えていたが、腹痛による脂汗で生え際がじっとりと濡れ、前髪が額にみっともなく張り付いていく。丁寧に仕上げたメイクは崩れ、ファンデーションが脂汗で浮き上がり、マスカラが滲んで目の下が薄黒くなっているのが自分でもよく分かった。演台の前に立ち、資料をプロジェクターに映しながら、私はタイトなワンピースの下で両脚をきつく交差させ、内もも同士を強く押し付け合って耐えた。パンプスの踵を交互にせわしなく上下させながら、お尻の括約筋を極限まで締め付ける。
説明の最中、お腹がゴロゴロと不快な音を立てて激しく波打つたび、声が上ずり、呼吸が荒くなって肩が激しく上下した。お腹の中で暴れ回る泥水のような塊を、極限まで引き締めたお尻の括約筋だけで必死にせき止めているのだ。もしここで途中退席すれば、これまでの準備もキャリアも一瞬で終わるという厳しい社会的な圧力が、私を演台の前に縛り付けていた。
便意の波は容赦なく第二波、第三波と襲いかかり、下腹部をギシギシと収縮させた。「あと5分、あとスライド2枚……」と頭の中で狂ったように残り秒数の計算を繰り返すが、お尻に力を入れると呼吸が止まりそうになり、額から滴る汗が目に入ってしみる。指先が資料を持つ手で白くなり、握りしめたクリアファイルが汗で湿っていく。恥ずかしさと、重役たちの目の前で決壊してしまうのではないかという恐怖が混ざり合い、頭が痺れるような高揚感を感じていた。
プレゼンがようやく終わり、丁寧な挨拶をした瞬間、私はお尻をかばう極端な内股の姿勢でゆっくりと壇上を降りた。一歩歩くごとに、お尻の奥で熱い塊が出口を求めて激しく自己主張し、涙目で顔を歪めながら多目的トイレへ駆け込んだ。個室の便座に座り、お腹の毒素が一気に流れ出た時の圧倒的な解放感は、今でもプロジェクターのファン音を聞くたびに思い出され、股の奥をキュンと熱くさせる。
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