排泄物語

歯科待合室の振り子

投稿者: 生成エピソード集(エピソード651〜700)2分で読めます閲覧 7703.9(7件)

うららかな5月の午後2時過ぎ、都内の静かなデンタルクリニックの待合室でのことだ。クラシック音楽が静かに流れる室内は清潔で、微かに消毒液の匂いが漂っていた。最初の異変は、受付を済ませてソファに座ってから10分が経過した頃だった。下腹部の奥深くで、ズンと重くのしかかるような鈍い便意の第一波が走った。

「すぐに呼ばれるはず」と楽観視していたが、前の患者の治療が長引いているのか、私の名前は一向に呼ばれなかった。さらに悪いことに、クリニックの唯一のトイレのドアには「清掃中」の看板が下がっており、使用できない状況だた。冷たい水が私の胃腸を急激に刺激し、逃げ場のない便意へと変化したのだ。

私はその日、フォーマルな白のフレンチスリーブニットに、タイトな黒の膝丈スカート、そしてストッキングに黒の6センチヒールパンプスを履いていた。髪はハーフアップに綺麗にまとめられていたが、腹痛による冷や汗で額の生え際からだらだらと汗が流れ落ち、首元の襟元を濡らしていた。メイクは崩れ、ファンデーションが脂汗で浮き上がり、顔面は完全に土気色になり、きつく噛み締めた唇からは赤みが消えて白くなっていた。

静まり返った待合室という、途中で席を立つことが極めて困難な社会的状況が、私を肉体的にも精神的にも限界へと追い詰めていく。ソファの上で、私はタイトスカートの下で両脚をきつく交差させ、内もも同士を強く押し付け合って耐えた。パンプスの踵を交互にせわしなく上下させながら、お尻の括約筋を極限まで締め付ける。お腹の中で暴れ回る泥水のような塊を、紙一枚の厚さの括約筋だけで必死にせき止めているのだ。

便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、下腹部をギシギシと収縮させた。「あと5分、早く呼ばれて……」と、頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返したが、名前を呼ばれる気配はなく、焦りで思考が停止しそうになった。

恥ずかしさと、この静かな空間で今にも決壊してしまいそうだという恐怖が頭を支配し、心臓は早鐘のように脈打っていた。

ようやく「美咲様、診察室へどうぞ」と呼ばれた瞬間、私はお尻をかばう極端な内股の姿勢で立ち上がった。しかし、一歩を踏み出す衝撃で決壊しそうになり、その場で固まってしまった。涙目でカバンをお腹に強く押し当て、がくがくと震える膝を内側に折り曲げ、すり足のような奇妙な歩幅で「すみません、先にトイレを……」と伝え、化粧室へと滑り込んだ。便座に座り、お腹の毒素が一気に流れ出た時のあの圧倒的な解放感は、今でも歯医者の匂いを聞くたびによみがえる。

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