披露宴控室の砂時計
秋晴れの爽やかな10月の日曜日、午後1時半過ぎの都内ホテルにある結婚式場の親族控室でのことだ。シャンデリアが眩しく輝く控室には、親戚一同が並び、暖房が効いた室内で会話を交わしていた。最初の異変は、披露宴が始まるのを待つ間に、突如として下腹部に走った鋭い尿意だった。
「あと10分で入場が始まるのに、今席を立つわけにはいかない」と自分に言い聞かせたが、それが地獄の始まりだた。直前にウェルカムドリンクとして出された冷たい緑茶が、この最悪のタイミングで膀胱へと直接送り込まれ、膨らみかけた風船のように限界を主張し始めた。
私はその日、お祝い用にお洒落をした薄ピンクのノースリーブのパーティードレスに、薄手のストッキング、そして7センチヒールのエナメルパンプスを合わせていた。髪は華やかにハーフアップに結んでいたが、尿意による冷や汗で額の生え際が濡れて前髪が額にはりついてしまった。メイクは綺麗に仕上げていたが、下腹部の激痛が走るたびに顔から血の気が引き、目の前がチカチカと暗くなるのを感じた。
親戚たちが賑やかに笑う控室という、途中で席を立つことが極めて困難な社会的状況が、私を肉体的にも精神的にも限界へと追い詰めていく。少しでも動けば周囲に怪しまれるという恐怖があり、私はテーブルの下で両手で膝を握りしめ、お尻の括約筋を極限まで締め付けた。ストッキングを履いた両脚をこれでもかと密着させ、両膝を左右に激しくもじもじと揺らしながら、パンプスのつま先だけで床を強く踏みしめて耐えた。
尿意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、下腹部をギシギシと収縮させた。「あと5分、早く呼ばれて……」と、頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返したが、焦りで思考が停止しそうになった。額から流れる汗が頬を伝い、丁寧に塗ったチークを溶かしていく。顔面は完全に土気色になり、きつく噛み締めた唇は白くなっていた。
恥ずかしさと、親族の前で今にも粗相をしてしまうのではないかという恐怖が頭を支配し、心臓は早鐘のように脈打っていた。
ようやく披露宴会場への移動が告げられた瞬間、私はお尻をかばう極端な内股の歩き方で個室を滑り出た。一歩歩くごとに、お尻の奥で熱い塊が出口を求めて激しく自己主張し、涙目で顔を歪めながら化粧室へ駆け込んだ。便座に座り、温かい水分が一気に放出された瞬間の圧倒的な解放感。今でも結婚式のチャイムを聞くたび、あの時の冷や汗と恐怖を思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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