ダンシング・クイーンの落とし穴
蒸し暑い8月の平日の午後8時過ぎ、都内にあるメガフィットネスクラブのスタジオでのことだ。アップテンポな洋楽が大音量で流れる室内は、ダンスレッスンを受ける会員たちで満員となっており、誰もが汗を流していた。私はスタジオ後方の壁際でストレッチをしていた。……その時、私の目の前で激しく踊っていたインストラクターの美沙さんが目に入った。
年齢は20代後半の引き締まった体型の女性。黒のタイトなスポーツブラに、グレーの体にフィットしたレギンス、そして白いスニーカーを履いていた。髪はポニーテールに結ばれていた。しかし、彼女がレッスン直前に飲んだ冷たいプロテインが胃腸を直撃したのか、彼女の様子に劇的な変化が訪れた。
彼女はダンスの動きを止め、両手でレギンスの上から下腹部を強く抱え込むようにし始めたのだ。さらに、グレーのレギンスの中で、両膝をぴったりとくっつけ、内ももを激しく擦り合わせるような仕微な動きを繰り返した。綺麗に施されたメイクはトレーニングの汗と混ざり合って崩れ、ファンデーションがヨレて額に張り付いた髪が苦しそうな表情を際立たせていた。
彼女の顔面は完全に血の気が引き、きつく噛み締めた薄い唇は白くなっていた。「あ、あの……」と小さく吐息を漏らしながら、次の瞬間、下腹部を襲った激しい腹痛の波に耐えかねて、彼女は上体を深く折り曲げてその場にしゃがみ込んでしまった。
便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、彼女のお腹の中でゴロゴロと不快な音を立てて波打った。お尻の括約筋を極限まで締め付け、スニーカーのつま先で床をトントンと不規則に叩きながら、お腹の急激な痛みに耐えている姿は、見てはいけないと思うのに目が離せなかった。私の心拍数は跳ね上がり、手のひらに冷や汗がにじんだ。
彼女は自分の腹痛の限界と、周囲の多くのジム会員に気づかれる恐怖との狭間で、必死に耐えていた。
しばらくして、彼女は同行者の女性に肩を借りるようにして、極端な内股の姿勢のまま、お尻をかばうようにすり足で更衣室のトイレへと消えていった。今でもスタジオのアップテンポなBGMを聞くたび、あの時の彼女の限界の表情と、漂っていた切迫した空気感を思い出して胸の奥が熱くなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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