冬の連絡船のデッキにて
冷たい潮風が吹き付ける1月の午後2時前、離島を結ぶ連絡船のオープンデッキでのことだ。冬の平日のため乗客は少なく、船は灰色の波を蹴立ててエンジン音を響かせながら進んでいた。私は風を避けるために船室の入り口近くのベンチに座っていたが、その時、手すりにしがみついている女性の様子がおかしいことに気づいた。
年齢は30代前半の、上品なコートを羽織った女性。キャメル色のカシミアロングコートに、膝丈のタイトな黒のニットスカート、そして黒の薄手タイツに本革のショートブーツを合わせていた。髪はすっきりとハーフアップにまとめられ、揺れるパールのイヤリングが印象的だった。しかし、海上の厳しい寒さと、直前に船内で飲んだ温かい緑茶が災いしたのか、彼女の様子に明らかな変調が生じ始めた。
彼女はタイトなスカートの上から、両手で股間のあたりを強く挟み込むようにし、内ももをこれでもかと密着させながら、ブーツのつま先だけでデッキの床を交互にトントンと叩き始めたのだ。綺麗に施されたメイクの隙間から、冷や汗がにじみ出て、おでこの前髪がベタりと張り付いていくのが至近距離で見えた。
同行の男性に話しかける彼女の声は微かに震え、きつく噛み締めた唇は完全に血の気が引いて白くなっていた。「あの、ちょっと……トイレ……」と言いかけたまま、次の瞬間、下腹部を襲った激しい尿意の波に耐えかねて、彼女は上体を深く折り曲げてしゃがみそうになった。
尿意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、彼女の膀胱を決壊寸前の水風船のように膨らませていた。船室のトイレは故障中で、目的地に到着するまであと20分はかかる状況だた。彼女は思わず「くっ……っ」と声を漏らし、小さなハンドバッグをギュッと下腹部に押し当ててお尻の括約筋を極限まで締め付けていた。見てはいけないと思いつつも、彼女の太ももが限界の緊張でがくがくと震え、タイトなスカートの生地が激しく擦れ合う様子から目が離せなかった。私の心拍数は跳ね上がり、喉が乾いて息をするのも忘れるほどだった。
しばらくして、船が港に接岸した瞬間、彼女はすり足のような不自然な足取りで、逃げるようにターミナルの化粧室へと消えていった。今でも船の汽笛を聞くたび、あの時の彼女の限界の震えと、漂っていた切迫した空気感を思い出して胸がゾクゾクと熱くなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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