地下ライヴハウスの灼熱とアルコール
高校を卒業してインディーズで活動を始めた頃。真夏の夜、下北沢の地下にある狭くて薄暗いライヴハウスが戦場だった。キャパシティはせいぜい百人程度なのに、冷房が全く効いていない灼熱の空間。出番の直前、気合を入れるために対バン相手と缶ビールとチューハイを煽ってしまったのが運の尽きだった。アルコールの利尿作用の恐ろしさを、私は自分の膀胱で思い知ることになる。
当時の衣装は、古着屋で買ったオーバーサイズのダメージTシャツに、黒のレザーショートパンツ。足元は編み上げのマーチンブーツだった。ステエジに上がった瞬間から汗が噴き出し、スモーキーに仕上げたアイメイクは一瞬でドロドロに溶け出していた。Tシャツは汗で肌にへばりつき、下着のラインまで透けて見えそうだったけれど、そんなこと気にする余裕もないほど、私の体内ではアルコールが猛威を振るい始めていた。
二曲目を歌っている最中、急激な波が押し寄せてきた。ビールによって作られた大量の尿が、私の膀胱を容赦なく内側から蹴り上げてくる。普段の尿意が「じわじわ」なら、アルコールのそれは「ガンッ」と殴られるような唐突さだった。レザーのショートパンツの中で、下腹部がパンパンに張り詰め、石のように硬くなっているのがわかる。狭いステエジの上で激しく頭を振るたび、重たい膀胱が揺れて尿道口に強烈な圧力がかかる。マイクを握る両手は震え、Tシャツの裾を無意識に引っ張り下ろして、股間への視線を遮ろうとしていた。
熱気と酸欠で頭がクラクラする中、四曲目のMCタイム。いつもならファンとの掛け合いを楽しむ時間なのに、私は呼吸を整えるふりをして、ひたすら股間に力を込めていた。マーチンブーツの中で足の指を丸め、太ももの内側を擦り合わせる。「あと二曲、時間にして約十分。いや、MCが押してるから十五分か?」そんな計算が頭を駆け巡る。でも、アルコールは待ってくれない。限界まで膨らんだ膀胱が「もう出させてくれ」と悲鳴を上げている。最前列の客との距離はわずか数十センチ。彼らは私の顔から滴る汗や、苦しそうに歪む表情を見て「エモい」と熱狂しているけれど、私はただ、今にも漏れ出しそうな熱いおしっこを必死にせき止めているだけだった。
ラストの曲は、テンポが速いパンクナンバー。私は狂ったようにシャウトしながら、実は身体の動きを最小限に抑えていた。腰を深く落とし、ガニ股にならないように膝をぴったりとくっつけたまま、上体だけでリズムを取る。照明の熱が肌を焼き、膀胱の圧迫感は絶頂に達した。サビの高音を張り上げた瞬間、ツンッという鋭い痛みと共に、わずかに尿道が開いてしまった。熱い液体が数滴、ショートパンツの下のショーツにジュワッと染み込む。漏れた!という恐怖と、それを観客の目の前で隠し通すという背徳的なスリルが、私の中に奇妙なアドレナリンを分泌させていた。
曲が終わった瞬間のことはよく覚えていない。機材を放置してステエジ袖に駆け込み、楽屋のトイレのドアを叩き閉めた。便座に崩れ落ちた瞬間、アルコールの匂いが混じった大量のおしっこが、轟音と共に便器に叩きつけられた。あの狭いライヴハウスの熱狂と、極限の我慢の末の解放感。それは、音楽への情熱と同じくらい、私の魂を焦がす病みつきの感覚になっていた。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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