夏の野外フェス、太陽とスパンコール
インディーズから少し名前が売れ始めた頃、夏の大型野外フェスのサブステエジに出演した時のこと。真夏の太陽が照りつける八月の昼下がり。気温は三十五度を超え、アスファルトからの照り返しで立っているだけでも息苦しいほどの酷暑だった。熱中症対策にと、本番前にスポーツドリンクを何リットルもがぶ飲みし、さらにクーラーの効いた冷え冷えの楽屋で待機していたのが間違いだった。野外の圧倒的な熱気の中に飛び出した瞬間、身体が急激に水分を排出しようと暴走を始めたんだ。
衣装は夏フェス仕様の特注品で、へそ出しのタイトなノースリーブトップスに、スパンコールがびっしり縫い付けられたマイクロミニのホットパンツ。足元は厚底のスニーカーだった。ステエジに飛び出して一曲目を歌い終える頃には、ボディラインにぴったり密着した生地は汗で完全に濡れそぼり、派手なアイシャドウも汗で流れて頬に色水となって滴っていた。金髪に染めた長い髪は束になって首筋にまとわりつき、息をするたびに胸が大きく上下する。でも、その激しい呼吸の本当の理由は、暑さでも疲れでもなく、逃れようのない尿意だった。
三曲目のダンスナンバーに入った頃、腹部の奥底からズーンと重い波がやってきた。スポーツドリンクの水分が完全に膀胱を満たし、はち切れんばかりに膨張している。野外フェスのサブステエジは、観客のノリが全て。私が煽らなければ、客はすぐに他のステエジへ流れてしまう。だから私は、パンパンに張った膀胱を抱えながら、厚底スニーカーで激しくステップを踏み続けなければならなかった。ジャンプするたびに、膀胱の中のタプタプの水が胃を突き上げ、尿道を激しくノックする。「うっ……」とマイクに乗らない声が漏れ、ホットパンツの中で太ももをきつく擦り合わせる。スパンコールの硬い感触が、内ももに食い込んで痛い。
中盤のMC。灼熱の太陽の下で、私は冷や汗と脂汗を同時に流していた。「みんな、最高に暑いね!」と笑顔で作った声の裏で、私の頭の中はパニックだった。あと四曲もある。フェスの持ち時間は厳格で、途中で抜け出すなんて絶対に許されない。何千人という観客の視線が、太陽の光と一緒に私に突き刺さる。股間に全神経を集め、尿道の括約筋を限界まで締め上げる。下腹部が引きつるように痛み、足の震えが止まらない。誰か助けて。もう無理、出ちゃう。青空の下、大勢の人の前でホットパンツから黄色い液体を滴らせる自分の姿が何度も脳裏をよぎり、その恐怖がさらに尿意を鋭くした。
六曲目、ついに限界のその先が訪れた。身体をよじるようにして歌いながら、私はもはや音楽のリズムではなく、我慢の限界のリズムで動いていた。腰を深く折り曲げ、マイクスタンドを股間に押し当てるようにして、物理的に尿道を塞ごうとする。観客はそれをセクシーなパフォーマンスだと勘違いして大歓声を上げる。その歓声が響く中、ツーッと、ついに一筋の熱い液体が内ももを伝い落ちた。「ああっ……」という吐息がマイクに乗り、私は目をきつく閉じた。汗なのか尿なのか分からない液体が、厚底スニーカーの靴下へと吸い込まれていく。
最後の曲は、もはや記憶が飛んでいる。ただひたすらに下半身に力を込め、顔を歪めてシャウトし続けた。演奏終了と共に「ありがとう!」と叫び、ステエジ裏の仮設トイレへと全力疾走した。プラスチックの簡易ドアを閉めた瞬間、ホットパンツを下ろすのももどかしく、便座に座る前に放水が始まってしまった。狭い個室の中に響き渡る激しい水音。野外フェスの大音量のベース音が外から地響きのように伝わってくる中、私は放心状態で排泄の快感に身を委ねていた。ライヴの狂乱と、青空の下で漏らしかけた極限のスリル。それが私のフェスの記憶だ。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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