道の駅の裏手で見かけたスーツ姿の女性の緊急事態
国道6号沿いの道の駅での出来事となります。平日の夕方17時頃、商談を終えて休憩に立ち寄ったところ、駐車場の端に営業車らしきセダンが停まっており、スーツ姿の30代くらいの女性が建物とは逆の裏手へ早足で歩いて行くのが見えました。黒いパンツスーツに、疲労の色濃い横顔、手には小さめのビジネスバッグ。一日の外回りを終えた帰り道といった雰囲気でございました。トイレは建物内にありますので、おかしいなと思いつつ私も飲み物を買って車に戻る途中、裏手の植え込みの陰にその女性がしゃがんでいるのが視界に入ってしまいました。
慌てて目をそらしましたが、状況から察するに、館内のトイレが清掃中で使用できなかったようです(入口にコーンが出ておりました)。女性の肩が小刻みに震え、片手で植え込みの枝を支えにしているのが一瞬見えました。もう片方の手はスーツのスカートの裾を強く握りしめておりました。女性側も私に気づいたようで、こちらへ向けた視線には申し訳なさと必死さが入り混じっておりました。数分後、何事もなかったような顔で車に戻って行かれました。頬がまだ赤らんでおられました。
お互い営業車、お互い外回りの身です。トイレのタイミングを逃した時の絶望は私にも覚えがあり、責める気持ちは一切ありません。館内の清掃が終わるまであと何分か、その表示を確認する間もなく限界に達してしまったのだろうと拝察いたします。おそらく建物に入った瞬間、コーンを見て血の気が引いたことと存じます。ただ、あの瞬間に裏手の写真を取りに行かなくて本当に良かったと思っております(道の駅の看板を記録する習慣があるのです)。
清掃時間の表示は事前確認をお勧めします。あの女性の後ろ姿は、しばらく頭を離れませんでした。営業という仕事柄、次にトイレがいつ使えるか分からない不安は、誰もが抱えているものだと思います。以来、私自身も道の駅に立ち寄るたびに、真っ先にトイレの状況を確認するようになりました。
― この話は、これにて ―
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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