常磐道の事故渋滞、隣の車線の営業女性の25kmの攻防
いつも興味深く拝見しております。私は営業車で東北方面を回っている者となります。昨年11月、いわき方面へ向かう常磐道で事故渋滞に捕まった際の目撃談を投稿いたします。渋滞表示は「通過に90分」。次のパーキングまで25kmという絶望的な状況となります。日没が近く、車内の暖房の音だけが響いておりました。
その渋滞中、隣の車線に社名入りの軽バンがおりました。運転しているのは30代くらいの営業職と思しき女性です。きっちりとした化粧に、後ろで束ねた髪、助手席には資料の束が積まれており、外回りの合間であることがうかがえました。停止と徐行を繰り返すうち、その方の様子がおかしいことに気づきました。ハンドルに額を付けて動かない。かと思えば背筋を伸ばし、天井を見上げ、また項垂れる。高速上の渋滞であの動きは、一つの事情しか考えられません。
車線の流れの関係で、私とその軽バンは40分近く並走する形になりました。見るともなく見えてしまうのですが、女性は途中から口を一文字に結び、ハザードのスイッチに何度も指を伸ばしては引っ込めておられました。時折体をくの字に折り、太ももを固く閉じ合わせる姿も見えました。渋滞が数メートル進むたびに車間を詰め、また止まる。その繰り返しのなかで、女性の肩がびくびくと強張っていくのが分かりました。路肩に停めたところで、周囲の車から丸見えの高速上では、女性には何の解決にもならないのです。
渋滞情報の表示板が残り距離を示すたび、女性がそちらへ視線をやるのも見えました。おそらく残り時間と己の限界とを何度も天秤にかけていたのでしょう。パーキング到着後、その軽バンは駐車枠を探す時間も惜しかったのでしょう、トイレ最寄りの通路に堂々と停まり、女性が全力疾走で駆けて行かれました。あの走りは間に合ったものと信じております。私も記録として渋滞情報の画面を撮りしつつ、営業車に携帯トイレを積むことの大切さを改めて胸に刻んだ次第となります。あの日の並走40分は、忘れがたい経験となりました。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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