6号線の大渋滞で前の車の奥様が路肩の茂みに消えた件
国道6号の上り、県境付近での目撃談となります。3月の連休、事故による通行止めで国道が完全に停止した際のことです。30分ほど全く動かない状況が続き、私の前に停まっていたワンボックスの助手席から、40代くらいの奥様風の女性が降りてこられました。上品なコートに、落ち着いた雰囲気の方でございました。ふくよかな体つきと丁寧な身のこなしから、家庭を大切にされている方だろうと拝察いたしました。
最初は伸びでもするのかと思いましたが、様子が違います。女性は車の横で何度か足踏みをし、下腹のあたりを片手でそっと押さえながら、運転席の旦那様らしき方と短いやり取りをしていました。声は聞こえませんでしたが、切羽詰まった表情は遠目にも分かりました。何度も車内を振り返り、後部座席の荷物を探すような仕草も見えました。おそらく携帯トイレの類がないか確認していたのでしょう。意を決したように後続の私に軽く頭を下げると、ガードレールを跨いで法面の茂みへ下りて行かれたのです。手にはティッシュとレジ袋。準備の良さから、車内でかなりの時間葛藤されていたものと推測されます。
滞在時間は約4分。その間、私は視線をやる場所に困り、ラジオの音量を上げて過ごしました。旦那様らしき方は運転席で身じろぎもせず、心配そうに何度もサイドミラーへ目をやっておられました。戻ってこられた女性は再び私に深く頭を下げ、何事もなかったように助手席へ収まりました。あの会釈は「お見苦しいところを」という詫びと「あなたも限界なら早めに決断を」という助言の両方だったのかもしれません。頬の赤みと、少し乱れた髪が印象的でした。
実際、その後も車列は1時間動かず、複数の方が同じ茂みへ吸い込まれて行きました。まるで臨時トイレの様相です。私は幸い無事でしたが、記録として渋滞情報の画面を撮りしつつ、次からは携帯トイレを2つ積むことを決意した次第となります。あの奥様の毅然とした後ろ姿は、今でも記憶に焼き付いております。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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